外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)改正案が11月27日、衆院法務委員会で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決した。立憲民主党など野党の反対を押し切り、採決を強行した格好だが、外国人労働者の問題として中小企業にとってありがちなのが、外国人の短期留学生の受け入れ。ただ留学生を雇用した場合、税金問題でミスすることもあるので注意したい。

知人の社長は飲食店を営んでいるが最近、インドと中国からの留学生をアルバイトとして雇用しているという。2人とも母国から学費の援助を受けているようだが、日本での生計としてはアルバイト収入が大きいそうだ。そこでこの知人の社長から、「この2人の源泉徴収はどうなるのか?」との質問を受けた。
外国人の源泉徴収となると、必要となる場合とそうでない場合がある。国籍により課税の範囲が違うのだ。そのため、これは即答できない。「確認してから連絡する」と言ってそのときは分かれたのだが、幸運?にも、日本と外国の租税条約について学ぶ機会になった。
中国から来た留学生は、日中租税協定第21条に「専ら教育を受けるために日本に滞在する学生で、現に中国の居住者である者またはその滞在の直前に中国の居住者であった者が、その生計、教育のために受け取る給付または所得は免税とされる」とある。つまり、中国から来日した大学生の日本での生活費や学費に充てる程度のアルバイト代であれば、免税になると考えられる。
とはいうものの忘れてはならないのが、免税措置を受けるためには、給与等の支払者である知人の社長経由で「租税条約に関する届出書」を所轄税務署長に提出する必要がある。
では、インドの留学生はどうなるのか。日印租税条約第20条によると、「専ら教育を受けるために日本に滞在する学生で、現にインドの居住者である者またはその滞在の直前にインドの居住者であった者が、その生計、教育のために受け取る給付は、免税とされる」とある。ただ「日本の国外から支払われるものに限られる」と但し書きあった。ということは、インドの留学生が稼いだ日本でのアルバイト代は、国外から支払われるものでないので免税とされないわけだ。つまり、知人の飲食店で働いたアルバイト代は、その留学生が居住者か非居住者かの判定を行った上、それぞれの区分に応じた源泉徴収を行う必要があるわけだ。
ここまで調べがついたものの、税務上の問題になるだけに知人の社長には「税務処理にあたっては税務署に確認したほうがいい」と伝えた。日本が締結している租税条約の学生条項は、免税とされる給付の範囲等が国によってさまざまであり、素人の話を信じて会計処理をされても責任を取れないからだ。