外資系企業などでは、社員に対するインセンティブとして株式を利用した報酬を与えることがあります。代表的な株式報酬としては、ストックオプション、リストリクテッド・ストック(RS)などがあります。過去に、こうした株式報酬の申告漏れが相次いで発覚したことから、現在では法定調書を税務署に提出することとなっています。

(1)株式報酬制度(インセンティブ)の概要
インセンティブ(incentive)には、「意欲向上や目標達成のための刺激策」などの意味があります。会社は、優秀な人材に長く組織に居てもらえるように、在職していることを条件に将来的に何らかの経済的利益を付与する約束を結ぶことがあり、こうした報酬を「インセンティブ報酬」と呼んでいます。
転職やヘッドハンティングの多い外資系企業では、優秀な人材が外部に流出せずに長く会社に在籍してもらうことが重要な課題の一つとなっているため、社員に対するインセンティブに力を入れています。
インセンティブのうち、株式を利用したものには次のようなものがあります。
■ストックオプション(SO)
決められた価額で株式を購入する権利を与えられる制度。決められた価額より高いときに権利行使すると利益が発生する。
■リストリクテッド・ストック(RS/譲渡制限株式)
役員や従業員に対し、一定期間経過後に一括又は何年かに分けて株式を無償で交付する制度。
■リストリクテッド・ストック・ユニット(RSU/制限株式ユニット)
株式と等価の譲渡不能のユニット(権利)が無償付与され、一定期間経過後に、何年かに分けてユニットの制限が解除され、株式に転換されるもの。
■従業員持株購入制度(ESPP/Employee Stock Purchase Plan)
一定期間ごと(半年・1年)に自社株等を時価より有利な価額で購入できるもの。
■ファントムストック(Phantom Stock)
定められた業務目標を達成した場合に、株式の値上がり額相当を、報酬として現金等で支給するもの。
(2)インセンティブ報酬の付与の流れ
インセンティブ報酬のほとんどは、外国親会社等の株式を取得する権利が付与されます。例えば、RSUの場合には、以下のような流れで役員や従業員の海外証券口座に株式が入庫され、当該株式を売却した後、国内の銀行口座に送金されます。
この場合、海外から送金を受けた銀行は「国外送金等調書」を税務署に提出します。また、日本子会社は「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」を税務署に提出します。税務署では、これらの法定調書と確定申告書等を照合し、申告漏れの有無をチェックしています。

(3)「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」とは
外国親会社からストック・オプションなどの株式報酬を付与された日本法人の役員や従業員が、権利を行使して得た利益については、個人で給与所得として確定申告する必要があります。しかし、申告漏れとなっているケースが相次いで発覚したことから、申告漏れを防止するために平成24年の税制改正で、「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」が導入されました。
この調書の提出までの流れは、概ね次の通りとなります。

