国税庁は、仮想通貨取引やネットオークション、動画配信などインターネットを介して個人が得た収入を適正に課税するため、全国の国税局にプロジェクトチーム(PT)を設置し、情報収集体制を強化します。
■新聞報道
200人規模のネット取引専門PTを設置
国税庁は「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応」を公表し、仮想通貨取引やシェアリングエコノミーなどの新分野への取組方針を明らかにしました。
全国の電子商取引専門調査チームを200人規模に拡充する新たなプロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、情報収集・取引解明を強化します。このプロジェクトチームは、すべての国税局に設置されます。
更に、入手した情報等をもとに、課税上問題があると認められる納税者には、税務署からお尋ね文書を送付して自主的な申告内容の見直しを要請する行政指導を実施する一方、大口・悪質な申告漏れ等が見込まれる者には反面調査や外国当局への情報提供要請などを含めた厳正な調査を行うとしています。
ネットビジネスの調査事例
【事例1:動画配信収入の申告漏れ】
調査対象者は、動画配信事業者を通じて動画配信を⾏っている。動画の視聴者は、動画配信事業者からポイントを購⼊し、気に⼊った動画配信者にプレゼントすることができる。動画配信者は、視聴者からプレゼントされたポイントを動画配信事業者を通じて換⾦することができるところ、調査対象者のプレゼントされたポイントの総額が申告額を⼤幅に上回ることが想定されたため、調査を実施した。調査の結果、視聴者からプレゼントされたポイントのうち、換⾦していないものについて申告していないことが判明した。
【事例2:仮想通貨取引の申告漏れ】
調査対象者については、暗号資産(仮想通貨)取引で多額の売買利益を得ていることが想定されるにもかかわらず無申告であったため、調査を実施した。 調査の結果、給与収⼊を原資として、複数の交換業者を通じて暗号資産(仮想通貨)取引を⾏っており、これらの取引で得た利益について申告をしていないことが判明した。
【事例3:ネットオークションに係る利益の申告漏れ】
調査対象者については、チケット転売サイトで購⼊したチケットを、ネットオークションに出品・売却することで、多額の利益を得ていることが想定されたため、調査を実施した。調査の結果、オークションサイトのID登録のほか、決済⼝座も親族名義を利⽤することで、自分の名前が一切表面に出ないよう画策し、申告義務を逃れていたことが判明した。
【事例4:アフィリエイト報酬の申告漏れ】
調査対象者については、ASP(Affiliate Service Provider)を通じて、多額のアフィリエイト報酬を得ていることが想定されたため、調査を実施した。調査の結果、アフィリエイトで稼いだ利益について申告をしていないことが判明した。
※ASPは、広告を掲載してもらいたい広告主(A社)と広告を掲載したいアフィリエイター(調査対象者)を仲介する役割を担う業者
インターネット取引を行っている個人に対する税務調査の状況
近年、インターネットを利用して収入を得ているケースが増えていますが、これらの収入について無申告となっているケースが多く見られます。
平成29年度において、インターネット取引を行っている個人に対して行われた調査の状況は以下の通りであり、追徴税額ベースで見ると、1件当たりの約186万円、総額で約37億円が追徴課税されました。
国税当局ではインターネット取引を行う個人に対する税務調査を強化するとしており、適正な申告が求められます。