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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:租税条約等に基づく情報交換の実施状況

国税当局が海外取引や国外財産の情報を収集するための手段の一つが「租税条約に基づく情報交換」です。国税庁は「平成29年事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を公表しました。

「情報交換」とは、外国の税務当局との間で、調査に必要な税に関する情報をお互いに提供し合う仕組みをいいます。税務当局は近年、この情報交換を積極的に活用し、外国の税務当局から調査に有効な情報の入手に努めています。
この情報交換は大きく①要請に基づく情報交換、②自発的情報交換、③自動的情報交換の3類型があり、下の図は、それぞれのイメージを示しています。

(出典)財務省資料

要請に基づく情報交換

「要請に基づく情報交換」は、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合に、必要な情報の収集・提供を外国税務当局に要請するものです。
具体的には、海外法人の決算書等、契約書、インボイス、銀行預金口座取引明細書などの他、外国税務当局の調査担当者が取引担当者に直接ヒアリングして得た情報など、幅広い情報が入手可能となっています。
29年度は、国税庁から外国税務当局に要請した件数は766件で、要請先の約8割をシンガポール、香港、韓国などのアジア・大洋州の国・地域が占めています。一方、外国税務当局から国税庁に寄せられた要請は137件でした。
【調査事例】
内国法人の法人税調査において、調査法人がA国の法人Bに対して多額の手数料を支払っている事実を把握した。法人Bの形式的な所有者は調査法人ではなかったが、法人Bの真の所有者は調査法人ではないかとの疑いが持たれた。このため、A国税務当局に対し法人Bの真の所有者がわかる資料の提供を要請した。A国税務当局から提供を受けた資料から、法人Bの真の所有者は日本の調査法人であることがわかり、調査法人に対して外国子会社合算税制(※)に基づく課税を行った。
(※)外国子会社合算税制
外国子会社を利用した租税回避を抑制するために、一定の条件に該当する外国子会社の所得を、日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度。

自発的情報交換

「自発的情報交換」は、国際協力の観点から、調査等の際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するものです。
29年度に国税庁から外国税務当局に提供した件数は 157 件、外国税務当局から国税庁に提供された件数は574件でした。

自動的情報交換

「自動的情報交換」は、法定調書から把握した非居住者等への支払等 (利子、配当、不動産賃借料、無形資産の使用料、給与・報酬、株式の譲受対価等)についての情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ一括して送付するものです。
29年度に国税庁から外国税務当局に提供した件数は、約 70 万5千件、外国税務当局から国税庁に提供された件数は、約 12 万3千件でした。
国税庁では、外国税務当局から提供された情報を申告内容と照合し、国外財産について申告漏れがないか等のチェックを行い、必要がある場合には調査を行っています。

【調査事例】E国の税務当局から提供された資料をもとに、日本の居住者Fの申告内容を検討したところ、E国のG銀行に預け入れた預金に係る受取利子が日本で申告されていなかったことを把握した。

我が国の情報交換ネットワークの現状

情報交換は、租税条約等に情報交換ができる旨の規定を置いている国との間で行うことができる制度です。この租税条約等には、二国間の租税条約のほか、情報交換を主たる内容とする情報交換協定、多国間の税務行政執行共助条約があり、これらの条約をすべて合わせると、平成30年10月1日現在、126か国・地域をカバーするまで拡大しています。
下図は我が国の租税条約ネットワークであり、ここに記載されている国・地域との租税条約等のすべてに情報交換規定が設けられています。我が国の企業と取引がある国の大部分がこのネットワークでカバーされていることが分かると思います。

(出典:財務省資料)

・※は、情報交換協定を締結している国・地域
・下線は税務行政執行共助条約を締結している国

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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