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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:平成31年度税制改正③ 過大支払利子税制の見直し

内国法人が、海外の関連法人に過大な利子を支払うことによる租税回避行為を防ぐための制度である「過大支払利子税制」について、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト最終報告書の提言を踏まえ、損金算入できる利子の範囲を引き下げる等、課税を強化する改正が行われました。

過大支払利子税制とは(改正前の制度)

過大支払利子税制は、平成24年の税制改正で創設された制度であり、過大な支払利子を計上することによる租税回避を防止するための制度です。
所得の計算上、支払利子が損金に算入されることを利用して、関連者間の借入れを恣意的に操作し、過大な支払利子を損金に計上することで、税負担を圧縮しようとする租税回避行為が可能となります。
過大支払利子税制とは、所得金額に比して過大な利子を関連者に支払うことによる租税回避を防止するため、関連者への純支払利子等(関連者への支払利子等-対応する受取利子等)の額のうち、調整所得金額の一定割合(50%)を超える部分の金額について、損金不算入とする制度です。
 平成31年度税制改正では、BEPSプロジェクト最終報告書の行動4で指摘された事項を踏まえ、従来の制度では手当がなされていなかった部分について見直しが行われました。

改正の背景

BEPSプロジェクトでの議論の中で、支払利子の損金算入を通じた租税回避は、関連者間取引に限られたものではなく、第三者からの借入れを使った場合でも生じ得るのではないかといった指摘なされました。
以下の図は、第三者への支払利子を使った租税回避について、BEPSプロジェクトの報告書で紹介されているものです。
この図は、国際企業グループに属する外国子会社において100の資金需要があり、10の資金コスト(利子)を支払う事例です。

この事例では、税率の低いB国の子会社の第三者からの資金調達を、税率の高いA国の法人があえて行うことで、結果としてグループ全体の税負担を軽減することが可能になる、といったことが示されています。
 すなわち、第三者借入であっても、それをいずれの国の法人が行うかの選択により、所得移転を生じさせ、グループ全体の税負担を引き下げることができるということになります。

改正の概要

こうした背景を踏まえ、平成31年度税制改正では、主に以下のような改正が行われ、従前より損金算入される利子の範囲が引き下げられました。

1 対象とする利子の範囲の見直し
対象となる利子の範囲について、従前は「関連者」への純支払利子のみが規制の対象となっており、第三者に対する支払利子までは含まれていませんでした。
今回の改正では、「関連者」への純支払利子のみでなく、第三者に対する支払利子も規制の対象に含まれました。

2 調整所得の見直し
「調整所得金額」を計算する際、従前は、非課税となる受取配当(受取配当の益金不算入額)を加算していました。これについてBEPSプロジェクトの勧告では、非課税となる配当を増やすことで利子制限の効果を弱める可能性があるのではないかとの指摘がありました。
今回の改正では、受取配当金のうち益金不算入となる部分について、加算の対象から除かれることとなりました。

3 損金算入できる割合の見直し
利子を損金算入できる割合について、従前は、調整所得金額の50%でしたが、BEPSプロジェクトの勧告では10~30%が望ましいとされていました。
そこで、BEPSプロジェクトの勧告を踏まえて、損金算入できる限度額が大幅に引き下げられ、調整所得金額の20%超の部分について損金不算入とされました。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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