国税庁が公表した『平成30年度 査察の概要』によれば、平成30年度においては、消費税の輸出免税制度などを悪用した消費税不正還付事案などに積極的に取り組み、過去5年間で最も多くの告発が行われました。こうした消費税不正還付は、国庫金の詐取ともいえる悪質性の高いものであることから、今後も厳正な調査を実施するとしています。
査察が告発した消費税不正還付事案の概要
平成30年度における告発件数は、以下の通り16件と過去5年間で最大となりました。
「送金課税」の仕組み
消費税不正還付の告発事案の概要
事案1:輸出免税制度を悪用した消費税の不正受還付事案
【概要】
A社は、貴金属の輸出等を行う法人であるが、実際にはダイヤモンド等の宝石の輸出販売を行っていないにもかかわらず、国内の業者からの架空仕入(課税取引)及び架空輸出売上(免税取引)を計上する方法により、不正に多額の消費税の還付を受けていた。
事案2:免税店(輸出物品販売場)制度を悪用した事案
【概要】
B社は、高額な腕時計の仕入れを装い架空仕入(課税取引)を計上するとともに、その商品を輸出物品販売場の許可を受けた免税店で外国人旅行者に販売したように装い架空売上(免税取引)を計上する方法により、多額の消費税還付金額を記載した内容虚偽の消費税の確定申告を行い、不正に消費税の還付を受けようとした。
事案3:消費税不正受還付「未遂犯」
【概要】
C社は、取引事実がないにもかかわらず、高級腕時計を代表者から仕入れたとする虚偽の納品書を作成し架空仕入(課税取引)を計上するとともに、香港でのオークション販売を装い架空輸出売上(免税取引)を計上する方法により、多額の消費税還付金額を記載した内容虚偽の消費税の確定申告を行い、不正に消費税の還付を受けようとした。
事案4:国外取引を国内取引に仮装した事案
【概要】
D社は、国外取引先への外注費の支払い(不課税取引)を、国内法人名義の虚偽の請求書を作成することで、国内での材料費の支払い(課税取引)に仮装し、消費税の 控除対象仕入税額を過大に計上した内容虚偽の消費税の確定申告を行い、不正に消費税を免れていた。
実刑判決(懲役4年6月)が出された事例も・・・
平成30年度においても、特に悪質な脱税者に対しては実刑判決が出されています。
消費税関連では、美容関連製品の輸出販売を行うL社が、架空の国内仕入(課税取引) 及び架空の輸出売上(免税取引)を計上する方法により、不正に多額の消費税の還付を受けており、同社の代表者Mは、消費税法及び地方税法違反の罪で、懲役4年6月の実刑判決を受けました。
※不正受還付罪の法定刑は10年以下の懲役もしくは1,000万円(情状により脱税額)以下の罰金、又はこれらの併科とされています(消費税法第64条①③)。
“未遂”に終わった場合も処罰の対象!
偽りその他不正の行為により消費税の還付申告書を提出し、消費税の還付を受けようとしたが未遂に終わった場合には「消費税不正受還付未遂罪」が適用されます。
「消費税不正受還付未遂罪」は、平成23年度税制改正で創設された罰則規定で、不正な還付申告書が税務署に提出された時点で犯罪が成立します。
それ以前は、実際に還付を受けた者だけが処罰の対象となっていました。そのため、多額の架空仕入を計上するなど消費税不正還付を狙った還付申告書を提出したとしても、税務署が実際に還付しない限り、処罰の対象とはなりませんでした。そこで、こうした不均衡を是正するために、未遂であっても処罰できる「消費税不正受還付未遂罪」が創設されることになりました。そのため、現在では不正な還付申告書が提出されたことが判明すれば処罰されるようになっています。
平成30年度においては、これまでで最も多い8件の事案で同罪が適用されており、不正還付未遂総額は約15億円となりました。
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