今年6月29日、朝日新聞に「国税幹部4人を懲戒処分 OBから『陣中見舞い』の現金」という見出しが紙面を飾った。東京国税局は前日の25日、幹部職員を懲戒処分とすることを発表。これを受けて、処分対象となった幹部が所属していた東京国税局などでは、OB税理士との接触を自粛する“お達し”が急きょ通達される事態となった。これでしばらく現職職員は、先輩達との飲み会も原則できなくなった。
この事件の中身は、東京国税局の幹部職員4名が、国税OBの税理士から現金計12万円を受け取ったとされるもの。他に職員2人も同じOBから計約1万2千円分の飲食接待を受けたとして厳重注意となった。東京国税局の発表によると、4人は東京国税局管内の税務署で署長や副署長、総務課長の立場にあった2014年2月~17年2月、来署したOBから「確定申告の陣中見舞い」として、1回あたり現金2万~3万円を受け取ったとされる。受け取った現金は、署内で食べる菓子購入などに使ったとされる。
報道によると、OB税理士は同署で副署長を務め、都内での税務署長を最後に12年に退職。「確定申告が繁忙期で大変だと知っていたので、少しでも助けになればと渡した」としている。16年と17年に3万円ずつ受け取った当時の総務課長は、かつてOB税理士とは上司部下の関係だった。
また、厳重注意を受けた2人は、国税局課長だった昨年3月と10月、このOB税理士と居酒屋に2次会に行き、それぞれ1回あたり約3千円の飲食費を負担してもらったとしている。
会見では「いずれも、OBに便宜を図る行為などは確認されなかった」と話しているものの、総務部長は深々と頭を下げ陳謝した。
この記者会見があったのは6月29日夕刻。国税庁は翌日の30日で事務年度が終了し、新たな体制で新事務年度がはじまる。「戒告処分」なら記者会見が必要になるから、局総務部長は相当慌てたと思われる。なぜなら、発表が新事務年度になったら、処分された幹部人事について、記者からねほりはほり質問される可能性が高いためだ。人事異動前なら、「すでに処分している」ことで、それ以上突っ込まれることはない。
そのため、記者は、この発表後、誰が処分されたのか、犯人探しに躍起になったのだが、「おそらく・・・」までしか分からないようだった。
さて、この事件の記者発表が行われる前の26日、東京国税局は、OB税理士との会合を自粛するよう管内に通達した。これは、新たなOB税理士との付き合い方のルールを定めたもので、「退職した上司が税理士業務をしていたら、これまでの人間関係もすべて白紙に戻すような厳しいルールとなっている」という。
話によると、OB税理士と会えるのは、税理士会の会合など、大勢が集まる場所。もしくは庁舎内(税務署など)の個室なら、1対1での面会は禁止。もし会うのなら、必ず他の職員が同席の上、扉は開けておき周囲の職員に不信感を抱かれないようにするとされたそうだ。ゴルフや旅行なども自粛の対象で、お世話になった職場の上司ということで結婚式に招待するのも禁止だという。もちろん、飲食をともなう会合は厳禁だ。「ほぼ、OB税理士と現職の付き合いは駄目になった」もので、OB税理士からは、「職場において長いこと人間関係を築き、上司部下を超えて付き合ってきた関係まで否定されるのは如何なものか」との指摘も聞かれる。確かに、わずか一部の人がやってしまったことで、全員を一律に制度で縛れば解決すると思うのは、疑問が残る対応でもある。
とうはいうものの、OB税理士は、昔の好で現職に取り扱いを聞くことや、いわゆる“顔”で業務ができなくなったと言える。真に力のあるOB税理士しか生き残っていけない時代がもうそこまで来ているのかもしれない。
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