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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:平成31年度税制改正④ 情報照会手続きの整備~悪質な無申告書等を特定

仮想通貨取引やシェアビジネスなどの取引を通じて得た所得について、悪質な申告漏れを防ぐため、仮想通貨交換業者などに取引者の氏名や住所などの提供を求めることができる情報照会制度が創設されました。

情報照会制度の創設

仮想通貨取引やシェアリングエコノミーなど、経済取引の多様化・国際化が進展している一方、悪質な所得隠しや無申告が問題となっています。
そこで、こうした問題に対処するため、仮想通貨取引やシェアビジネスなどの取引を通じて得た所得について、仮想通貨交換業者などに取引者の氏名などを提供するよう求めることができる「情報照会制度」が平成31年税制改正で創設されました。
これまでは、国税庁から個人情報についての照会があっても、事業者側はそれに応じる義務はありませんでした。今後は、申告漏れが疑われる個人に関する必要最低限の情報を入手できる制度が導入されたことから、税務調査がより徹底していくものと思われます。

制度の仕組み

所轄国税局長は、一定の要件を満たす場合には、事業者等に「特定取引者」(※)の氏名又は名称、住所又は居所及び個人番号又は法人番号につき、60日を超えない範囲内において、報告を求めることができるようになりました。
(※) 「特定取引者」とは、事業者等との取引(事業者等を介して行われる取引を含む。以下「特定取引」)を行う不特定の者をいいます。

一定の要件とは、この報告の求めによらなければ、特定取引者を特定することが困難であり、かつ、次の①から③のいずれかに該当する場合をいいます。
① 特定取引と同種の取引を行う者(その取引に係る所得等が年間1,000 万円を超える者)に対する税務調査の結果、その半数以上で、当該所得等について申告漏れが認められた場合
② 特定取引が違法な申告のために用いられるものと認められる場合
③ 特定取引が経済的観点から見て通常であれば採られないような不合理な取引態様であることにより、違法行為の存在を推認させる場合

なお、所轄国税局長が、事業者からこのような報告を求める場合には、事業者等の事務負担に配慮するとともに、報告を求める事項を書面で事業者等に通知しなければならないとされています。ただし、報告の求めに対する拒否又は虚偽報告については、罰則が設けられています。
この改正は、2020年1月1日以後に行う協力又は報告の求めについて適用されます。

新聞報道事例(仮想通貨取引の所得隠し)

以下の事例は、平成31年3月9日の読売新聞の記事の一部です。

仮想通貨換金所得隠し 無登録業者2億円 国税指摘
無登録で仮想通貨の換金を代行するF社が、東京国税局の税務調査で2018年5月期に約2億円の所得隠しを指摘されていたことが関係者の話で分かった。同社は、個人が相対取引で購入した仮想通貨をブローカー経由で受け取り、金融庁に登録する正規の交換業者で換金。換金額の数%を手数料として得ていたが、一部しか申告していなかった。仮想通貨を巡る換金代行業者の税逃れが明らかになるのは初めて。

個人が税逃れに利用か
換金を依頼した個人は、一連の取引の「秘匿性」に目を付けたものとみられ、利益を適正に申告していない可能性が高い。今回の税務調査では、無登録の換金代行業者を利用した個人の税逃れの構図も浮かび上がった形だ。
関係者によると、同社は17年8月に設立され、個人が相対取引で購入した仮想通貨を複数のブローカー経由で受け取り、正規の交換業者に作った同社名義の口座で換金。同社とブローカーは、換金額の1〜5%の手数料を山分けしていた。
同国税局は、ブローカーについても数人から事情を聞いており、手数料収入の申告がなければ税務調査に乗り出す見通し。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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