10月から消費増税が予定されているが、これを契機に消費税の税務調査も従来とは変わってきそうだ。とくに税務職員にとって、勤務評定の高いといわれる「重加算税」については、消費税においても警戒しておくべきテーマになってくる。

これまでは、所得税や法人税の調査と一緒に行われてきた消費税調査だが、今回の消費増税を受けて、単独調査など税務当局の動きも変わってくるかもしれない。これからは消費税が国の中心的な財源になる税収だけに、調査を甘く見ていると痛い目にあうだろう。特に、気を付けたいのが重加算税。重加算税案件は、税務当局内でも勤務評定が高いといわれる。「税務署職員も無理には重加算税にもっていかなくても、賦課できそうなら厳しくチェックしてくる」と国税OB税理士。重加算税を課せることになれば、この部分は経費計上できないだけでなく、2回目になるとさらに10%加算できる制度設計になった。つまり、次回調査が実施されれば、必ず重加算税については厳しく見られることになる。

重加算税について、今注目されているのが消費税調査。10月からは現行8%から10%に2%上げられるため、国税の消費税だけでなく地方消費税にも関心が集まっている。国税通則法では、地方消費税と消費税の課税対象は同一であることから、事業者が消費税の国税通則法第68条第1項または第2項(重加算税)に規定する課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠ぺいし、仮装していたことにより重加算税を課する場合には、地方消費税についても当然に重加算税を課すとしている。
確かに、上記の理由は分かるが、現実問題になると重加算税は厳しいペナルティーだ。
このほか、法律では所得税または法人税に不正事実があり、所得税等について重加算税が賦課されると、この不正事実が影響する消費税の不正事実に係る増差税額にも重加算税が課せられるとしている。
このほか、国税OB税理士によると、重加算税を課す消費税固有の不正事実がある場合、所得税等の所得金額には影響しないものの、消費税額に影響する不正事実、いわゆる消費税固有の不正事実により、消費税が過少申告であるなら、消費税の重加算税を課する可能性が出てくるという。
たとえば、
1、「課税売上げを免税売上げに仮装する」
2、「架空の免税売上げを計上し、同額の架空の課税仕入れを計上する」。
3、「不課税または非課税仕入れを課税仕入れに仮装する」。
4、「非課税売上げを不課税売上げに仮装し、課税売上割合を引き上げる」。
5、「簡易課税制度の適用を受けている事業者が、資産の譲渡等の相手方、内容等を仮装
し、高いみなし仕入率を適用する」
といったケースだ。

今回の消費増税では、8%から10%の2%アップで税収は5兆円増えるという。かつては、国税当局も消費税法の定着、適正な運用を考え、税務調査でも緩やかに運用してきた感じにも見受けられる。平成元年から消費税が導入されすでに30年が過ぎ、消費税も社会に根付いたことから、ここらあたりから調査も厳密にチェックされる可能性が高い。当然、税理士なら重加算税についても十分な知識を身に着け、税務調査の立ち合いでは当局職員と対等に意見できるようにしておきたい。