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「CoCo壱番屋」創業者の申告漏れから学ぶ減価償却 節税ノウハウで抑えておきたい基礎

「カレーハウスCoCo壱番屋」創業者の宗次徳二氏(70)が取締役を務める資産管理会社「ベストライフ」(名古屋市中区)が、名古屋国税局の税務調査を受け、法人税約20億円の申告漏れを指摘されていたとマスコミが報道している。同社は、減価償却できない資産を計上しており、関与していた税理士のミスが原因。「減価償却」は法人節税の基本、税務調査でもチェックされるだけに注意が必要だ。

マスコミ報道によると宗次氏は、所有していたイタリア製のバイオリン「ストラディバリウス」など約30丁を減価償却資産として計上。昨年、名古屋国税局にその税務処理をめぐり約20億円の申告漏れを指摘されていた。加算税を含む追徴課税として約5億円はすでに納付しているが、指導していたのは税の専門家である税理士だった。

報道によると、名古屋国税局は、事業で使う一般の楽器は減価償却が認められているが、宗次氏の楽器のなかには希少価値のある骨董(こっとう)などの美術品と同じで、年数が経っても価値が下がらないものもあると指摘。いずれの楽器も減価償却資産に該当しないと判断した。

資産運用会社は、宗次氏が2007年に名古屋市・栄に私財で建設したクラシック専用音楽ホール「宗次ホール」の運営・管理をはじめ、音楽活動の企画などをしているが、楽器は、音楽活動を支援するため宗次氏が購入し、国内外の若手音楽家らに無償貸与していた。しかし、宗次氏と妻(69)は15年と17年、楽器の代金など管理会社に対する約10億円の債権を放棄。2016年までに同社へ所有権を移していた。ところが債務免除の利益で同社の株価が上がり、国税局は、株価上昇分が夫妻や親族ら株主7人への贈与に当たると判断、過少申告加算税を含む追徴税額約7億円の申告漏れも指摘している。追徴課税は合計約4億円に上るようだが、こちらもすでに全員が納付している。

報道によると宗次氏は、当時の顧問税理士から、楽器について「減価償却できる」と言われ税務処理を行ったとしている。「税の知識がなく信じてしまった。大いに反省している。税理士への法的措置を検討する」そうだ。
また、株価上昇についても、「知識不足による税務処理のミス。当時の税理士に任せきりだった。考えが甘かった」と話しているようだ。
世界に600丁しかないといわれるバイオリンの名器「ストラディバリウス」は、値段は一丁が十数億円するものもある。こうした希少性、金額も高い楽器は事業で使う機会装置などとは違い、年数を経ても価値が下がらないため美術品同様に減価償却できないとされている。

日本における減価償却は、2007年度税制改正において制度改正されたため、取得日が07年3月31日以前、同年4月1日以後とで方法が異なる。法人税における減価償却は、所有する減価償却資産について、その取得価額を基礎として、法定耐用年数に基づく償却率により一定の方法で償却を行うとされる。減価償却資産の償却費については、企業会計では経費に含まれるものの、税法では、所得の計算上損金の額に算入する金額は、確定した決算において償却費として損金経理した金額のうちその取得をした日及びその種類の区分に応じ選定した償却方法によって計算される償却額の限度内に限られる(法31①)。

一方で減価償却できない資産は、法人税基本通達(7-1-1)で「時の経過によりその価値の減少しない資産」は減価償却資産に該当しないこととされており、次に掲げる美術品は、「時の経過によりその価値の減少しない資産」と取り扱うとされている。(昭55年直法2-8「十九」、平元年直法2-7「二」、平26年課法2-12「一」により改正)

(1) 古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの。
(2) (1)以外の美術品等で、取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除く。)

<注>
1、 時の経過によりその価値が減少することが明らかなものには、たとえば、会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として法人が取得するもののうち、移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであり、かつ、他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものが含まれる。

2、 取得価額が1点100万円未満であるもの(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除く。)は減価償却資産と取り扱う。」

毎日新聞の報道によると関与していた税理士は、問題発覚後、一方的に顧問契約を打ち切り、毎日新聞の取材に対して「もう関係のないことなので、分からない」と話していたという。

減価償却は、法人税の節税としてはイロハのイである一方、減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法などで判断の誤りも少なくないため税務調査ではキッチリと調べられる。それだけに、課税当局との見解の相違による争いになることも少なくない。
法人税法上では、必ず償却しなければならないという規定はないが、中小会計要領には毎期継続して償却していかなければならないとされている。建物のように形がはっきりしている資産はわかりやすいが、ソフトウェアなど分かりにくいものも最近は少なくない。

税理士でも判断に迷う減価償却。適用に当たっては、素人判断では誤ることも少なくないため十分に気を付ける必要がある。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

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