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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:進出先の新興国で受けた不合理な課税の実態

経済産業省より、海外展開している日本企業を対象に実施された「国際課税問題及び租税条約に関するアンケート調査」の集計結果が公表され、海外展開している日本企業が、進出先の新興国で受けた課税の実態が明らかとなっています。これによると、新興国では海外企業に対して強引な移転価格課税やPE認定などの課税処分が行われることが多いようです。

新興国において課税事案が発生した国・地域を、事案数ベースでみると、中国が25.3%と最も多く、次いでインドネシア(20.9%)、インド(14.8%)、タイ(7.7%)、ベトナム(6.6%)の順となっています。

また、課税の内容としては、「移転価格税制」に関するものが最も多く、次いで「ロイヤルティ」、「恒久的施設(PE)」(15.4%)の順となっています。
以下の課税事例は、アンケート調査で回答のあったものです。

移転価格税制に関する課税事例

・ 実際の利益率よりも高い利益率を税務当局から提示され、反論をしたが認められなかった。【中国】
・ スタートアップ期間のコスト・低稼働による低利益率が認められず、一方的な更正を受けた。【インド】
・ 取引の詳細な調査・確認を行うことなく、会社全体の損益をTNMMに基づき補正された。【インドネシア】
・ 事前確認(APA)の対象期間として申請済みにもかかわらず、税務調査において更正通知を受領した。【インドネシア】

ロイヤリティに関する課税事案

・ 生産切替え・立上げ期など、利益が高くならない時期においては、親会社に支払うロイヤルティの対価性がないとの指摘を受けた。【インド】
・ ロイヤルティの根拠となる無形資産(製造ノウハウ)について、製法の難易度、進出後相当期間が経過しているのですでに陳腐化している等を理由に、そもそも無形資産に価値がない旨を現地当局から主張された。【インドネシア】
・ 赤字の現地子会社からのロイヤルティ送金は、経済的価値を創出していないという意味で、独立企業原則に反するとされた。【中国】
・ 製造会社においてBrand Royalty(商標権)はありえない、ロイヤルティ率は3%から5%が一般的であると指摘された。【中国】

PE(恒久的施設)認定に関する課税事案

・ 当社は中国の機械設備メーカーA社と技術支援契約を締結し、A社の顧客の中国拠点に機械設備を設置する際に、短期間の出張をし、技術支援を行ったが、当該技術支援料の支払いの際、収入金額にみなし利益率をかけた金額を課税所得とし、企業所得税25%が課税された(出張者・出向者のPE認定)。【中国】
・ 中国における営業の補助業務を行う駐在員事務所が、みなし課税の対象とされた(駐在員事務所のPE認定)。【中国】

その他の課税事案

・ 海外子会社から日本親会社へ支払ったサポート費について、子会社側では損金処理したが、現地税務当局からサポート費が配当とみなされて損金不算入になった。【韓国】
・ 日本親会社が現地子会社から徴収しているIGS(企業グループ内役務提供)費用について、現地当局の税務調査において損金処理が否認された。 【インドネシア】【ベトナム】【中国】

これらの課税措置に対する対応としては、回答企業の約半数が現地当局による課税措置を受け入れており、相互協議などが十分に活用されていないのが現状のようです。
新興国においてはPE認定等を強化する傾向にあります。日本親会社から海外子会社に出張し、海外子会社のサポートを実施した場合、日本親会社は海外子会社に対価を請求することになりますが、外国において、日本からの費用請求をもって日本親会社のPEが外国にあると認定されたり、請求した費用について現地子会社の費用として認められなかったケースもあります。
新興国への海外進出を予定している企業にとっては、外国の課税の執行状況を確認するなど、課税リスクを十分に検討することが重要となってきます。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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