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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:非永住者② 非永住者の「送金課税」

来日外国人で日本での居住期間が短い場合、「非永住者」というステイタスに該当する場合があります。この「非永住者」に該当すると、海外から日本に送金された金額に課税される「送金課税」という独特の制度があります。

非永住者の「送金課税」

「非永住者」とは、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。いわゆる、海外の本社や親会社などから日本へ赴任しているExpatriate(略してExpats、エクスパッツ)と呼ばれる外国人社員は「非永住者」に該当することが多いようです。

この「非永住者」の課税範囲は、①国内源泉所得、及び②国外源泉所得で「国内で支払われたもの」か「国内に送金されたもの」となっています。海外から日本に送金されたものにも課税されるという点が特徴的です。

「送金課税」の仕組み

上記のような所得を有する非永住者が、260を国外から国内に送金した場合、課税される金額はいくらになるでしょうか?

このケースでは、国外払いの金額が350(=B+D)ありますが、どの部分から送金されたと考えるかがポイントです。

非永住者の課税所得の計算において、国外から送金がある場合には、次のようにして課税所得を計算します。
① その年の国内源泉所得のうち、国外で支払われたものがある場合には、まずその国内源泉所得について送金があったものとみなす。
② ①で残りの金額がある場合には、残りの金額の範囲内で国外源泉所得について送金があったものとみなす。

日本に送金された金額が計算対象の年分の所得とは関係のない、例えば過去の収入から積み立てた預金から送金した場合であっても、課税所得を計算する上では、その年分の所得に係る送金として扱われることになります。

したがって、上記の数値例では、260の国外払いのうち、まず国内源泉所得の国外払い250(B)の送金であるとみなし、残りの10を国外源泉所得の国外払い(D)からの送金とみなして課税されます。

よって、課税される額は、500(A)+250(B)+150(C)+10(Dの一部)となります。

事例

X(アメリカ人)は、米国法人の日本子会社で3年間勤務する予定で平成30年に来日しました。Xは、非永住者に該当します。平成30年におけるXの所得は以下の通りです。また、平成30年中に不動産の購入資金として2,300万円を日本に送金しました。日本で課税される金額はいくらでしょうか。

イ 日本での勤務にかかる給与収入(国内源泉所得):3,000万円(1,000万円は国内で支払われ、残額の2,000万円は米国の銀行口座に振り込まれた。)

ロ シンガポール法人から受領した配当金(国外源泉所得):500万円(米国の銀行口座に振り込まれた。)

(回答)
・給与収入のうち、国外払いの金額(2,000万円)があるため、国内に送金された金額2,300万円のうち、まず2,000万円はその支払いがあったものとみなします。

・残りの300万円の範囲内で、国外源泉所得について送金があったとみなします。よって、配当金500万円のうち、300万円について「国内に送金されたもの」として課税されます。

以上をまとめると、日本での課税対象額は以下の通りとなります。

イの給与収入3,000万円
ロの配当収入のうち、国内に送金があったものとされた300万円

留意点

来日して間もない外国人の場合、日本に資産がないため母国から必要資金を送金するといったケースも多く見られます。そのまま国外に資金を置いておけば課税されなかったものが、日本に送金したために課税の対象となってしまうことがあるので注意が必要です。

国内に送金した年に、国外源泉所得の国外払いがなければ、日本にいくら送金しても送金課税はありません。したがって、国外源泉所得の発生状況を見据えながら、どのタイミングで国内に送金すると税負担が少なくて済むか、といった検討も必要になると思われます。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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