今回は、各法人の2017/2018年度の業務収入について、「業務及び財産の状況に関する説明書類」から見ていきます。なお、A&Aパートナーズのみ2018年7月期決算、ほかは2018年6月期決算となります。

①業務収入:首位、2位グループ、4位グループに分かれる結果に

各法人が発表している「業務及び財産の状況に関する説明書類」から、業務収入についてみていきましょう。なお、太陽と優成合併前の数字となります。

1位は、人員数・クライアント数ともにトップの太陽です。70億円と、中堅監査法人の中では頭一つ抜けた数字となりました。優成との合併でこの数字がどこまで伸びるか、2018年度の決算が非常に注目されます。

2位のPwC京都と3位の東陽は肉薄しており、それぞれ44億円と42億円。人員数やクライアント数では東陽がPwC京都を圧倒している一方、業務収入はPwC京都の方が上となるのは、非監査証明業務収入の差が影響した結果です。

中堅以下の中で非監査証明業務収入がトップのPwC京都。元々みすず監査法人京都事務所から独立したため、旧みすずの顧客と世界トップレベルのPwCという提携ファームを引き継いでいるため、かなり特殊な収益体制となっています。
1社あたりの監査収入やコンサルティング料の差が東陽とPwC京都の業務収入の差となっているようです。
4位と5位には、仰星と三優が続きます。東陽にだいぶ離されての、29億円と28億円。仰星も非監査証明業務収入が多いところに特徴がある法人です。
ここまでが準大手といわれる監査法人となります。

中小監査法人のトップは、アークの13億円です。5位の三優の半分以下であり、クライアント数や人員数では測れない中堅と中小の間にある高い壁が、業務収入を見ることではっきりと分かってきます。アークに、ひびきの12億円、A&Aパートナーズの10億円が続きます

中堅以下の監査法人は、非監査証明業務収入が業務収入に占める割合は10%以下しかありません。一方、大手の中で非監査証明業務収入が一番少ないEY新日本でも、その比率は16%あります。監査法人本来の業務に集中していることがよく分かる結果となっています。

②提携ファーム:今期は東陽が提携ファームを変更

各法人とも、海外展開するクライアントへの対応のため、また国際財務報告基準(IFRS)の導入のため、国際的なネットワークファームへの加入は欠かせません。
「トーマツ」「EY新日本」「あずさ」「PwCあらた」のBIG4は、それぞれ世界でもBIG4と呼ばれるネットワークファーム「Deloitte Touche Tohmatsu」「EY Global」「KPMG International」「PwC International」と提携を結んでいますが、中堅法人の場合は日本国内と世界的な順位はあまり一致していません。

東陽は、2018年6月末にBDOとの提携を解消。以前加入していたCrowe Globalに加入し直しました。現在世界5位のネットワークBDOと提携しているのは三優のみとなります。また、Crowe Globalとは優成も提携関係にありましたが、太陽と優成の合併により、合併後の法人は太陽の提携先であるGrant Thorntonに一本化。これにより、Crowe Globalの提携先は東陽のみとなりました。

まとめ

2019年10月より、一定量の貯金を持つ農協に公認会計士による監査が義務付けられることが決定しています(『日本経済新聞』2017/7/9電子版)。2017年には、JA専門で会計監査を行う「みのり監査法人」が発足。現在600ある農協が全てみのりと契約すれば、突然中堅監査法人の仲間入りをする監査法人が誕生することになります。今後の展開に要注目です。

また、人員を抱え大口の契約を担う能力を得た太陽が、どれだけBIG4の牙城へ食い込むことができるか。各監査法人が、どのように業績を伸ばしていくことができるか。来期以降の中堅監査法人業界もその動向が注目されます。

 

【参考資料】
◆太陽有限責任監査法人:第48期 業務及び財産の状況に関する説明書類
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000092/200704000092_setumei.pdf

◆東陽監査法人:第48期 業務及び財産の状況に関する説明書類
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000073/200704000073_setumei.pdf?logitems=200704000073,4

◆PwC京都監査法人:第13期 業務及び財産の状況に関する説明書類
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200708000231/200708000231_setumei.pdf?logitems=200708000231,4

◆仰星監査法人:第29期 業務及び財産の状況に関する説明書類
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000068/200704000068_setumei.pdf?logitems=200704000068,4

◆BDO三優監査法人:第32期  業務及び財産の状況に関する説明書類
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000120/200704000120_setumei.pdf?logitems=200704000120,4

◆ひびき監査法人:第40期  業務及び財産の状況に関する説明書類
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000025/200704000025_setumei.pdf?logitems=200704000025,4

◆アーク有限責任監査法人:第37期  業務及び財産の状況に関する説明書類
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000071/200704000071_setumei.pdf?logitems=200704000071,4

◆監査法人A&Aパートナーズ:第29期  業務及び財産の状況に関する説明書類
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000078/200704000078_setumei.pdf?logitems=200704000078,4

◆Accountancy Daily ,”Top 25 survey: global accounting networks & associations 2018”
https://www.accountancydaily.co/top-25-survey-global-accounting-networks-associations-2018

◆日本経済新聞電子版 2017/7/9「JA会計監査、専門の法人発足 農協改革に対応」
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS07H57_Z00C17A7NN1000/

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