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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:判決・裁決紹介 非永住者の課税所得の計算に当たり、「国外から送金を受けた金額」から「国外へ返金した金額」を控除することは認められないとされた事例

非永住者の課税所得の範囲は、①国内源泉所得、及び②国外源泉所得で「国内で支払われたもの」か「国内に送金されたもの」となっています。今回の裁決では、この国外源泉所得の計算に当たり、国外から送金を受けた後に国外に返金した事実があっても、国外へ返金した金額を課税所得から控除することは認められないと判断されました(平20.8.4裁決)。

事実関係

非永住者であった個人Xが、確定申告において、非永住者であった期間の国内源泉所得のみを申告したところ、国税当局は、Xが受領した国外からの送金について、国外源泉所得で国外払いのものについて送金があったものとみなされるとして、所得税の更正処分を行った。

それに対し、Xは、当該送金はいったん送金された金額をその年中に国外に返金し、翌年再度国外から送金されたものであるから、当該送金された額から国外へ返金していた金額を控除すべきである等と主張して処分の一部の取消しを求めて審査請求した。

審判所の判断

① 所得税法において、非永住者の課税所得の範囲が限定されているのは、非永住者も居住者であるから全世界所得に課税する旨の規定を設けることも可能であるが、我が国とのつながりが希薄と考えられる一定の者については、課税権の行使に一定の限定をする趣旨によるものである。そして、国外源泉所得のうち国内で支払われ、又は国外から送金されたものを課税所得の範囲に含めているのは、我が国に送金等がされたことにより国外源泉所得に我が国との関連が生じ、課税権の行使を限定する必要がなくなるからであると解される。

② そのように考えると、国内で支払われ、又は国外から送金されたことを非永住者の国外源泉所得を課税所得とするための要件としているのは、送金を課税権を行使する契機としたものというべきであり、さらに、所得税法施行令において送金の内容に特段の限定を付していないことにも照らせば、いったん国外払の所得が国外から国内に送金された事実があれば、特段の限定なくこれらの規定による送金があったということができるというべきである。

③ したがって、同一年中に送金額を返金した場合は、これを送金額から控除できると解すべき理由はない

④ また、国外からの送金額を返金し、再度、その翌年に当該返金額を送金したとしても、当該送金額は国外から送金されたものとして、その翌年の課税所得の対象となることに対し、Xは当該返金額が二重に課税所得の対象になると主張したが、これはその年とその翌年の各年分の国外源泉所得に課税したものであって 、同一の所得に二重に課税したものではない。

コメント

今回の裁決は、非永住者の課税所得に含まれる国外源泉所得について、国外から送金を受けた後に国外へ返金した事実があっても、当該国外へ返金した金額を課税所得から控除することは認められないと判断したものである。すなわち、一度国内に送金されたことによって、課税権の行使が発動されたものについては、後に返金したとしても課税が停止することはないということになる。

近年では、日本で勤務する外国人社員は増加しており、このようなケースが今後も発生する可能性はあるだろう。国税当局は国外送金等調書により国内への送金には目を光らせていることから、非永住者にとっては、課税制度をしっかりと理解し、母国から日本へ送金する際には慎重な判断が必要となるであろう。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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