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2020年から確定申告が少しラクになる!? スマホ、キャッシュレス決済がポイント

東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年は、税金を納めるシステムの転換期にもなりそうだ。消費税率の引き上げを契機に、現金からキャッシュレス決済、マイナンバーカードの活用とお膳立てはできた。キャッシュレス決済、マイナンバーカードの取得など、筆者も比較的時代についていけていないが、どのように変わっていくのか迫ってみた。

今や日本人のほとんどがスマホを所有している。総務省の30年度版「情報通信白書」によれば、日本人のスマホ所有率は60.9%であり、20歳代、30歳代においては90%を超える。普及率のすさまじいスマホだが、国税当局もこのスマホをいかに有効活用するか頭を悩ませてきた。

実は、2019年1月からは確定申告のスマホ申告がスタートしている。国税庁によると2018年分の確定申告では、スマホ申告を利用して確定申告書を作成、提出した納税者は約36万6000人。現状は、スマホ申告で国税の電子申告・納税(e-Tax)送信を行うためには、事前に税務署員と対面をして本人確認を行った上で、ID・パスワードの交付を受け、そのID・パスワードを使ってログインをする必要がある。税務署では、毎年確定申告前に説明会を実施するのだが、そこに参加すると、帰り際に希望者には面談をしてくれ、パスワードとIDを発行してくれるから思ったより簡単に取得できる。実は筆者もID・パスワードをそこで取得した一人だ。

「確定申告も便利になっていくなぁ」と思っていると、なんと2019年分の確定申告からは、マイナンバーカードを所有していれば、ID・パスワード方式でなくても送信が可能になるらしい。今もマイナンバーカードを持っていれば、戸籍謄本や住民票などの書類も、役所に行かなくても近くのコンビニで取得できるため、「持っていると意外に便利だなぁ」と思っていたが、将来的なことを考えると取得しておいて損はなさそうな気がする。筆者自身は、これまであまり取得に積極的でなかったので、「心変わり」に傾いているわけだが、電子政府として世界で知れたエストニアにも行って思ったのは、「使い方によってはこれから欠かせないツール」ということ。日本政府もエストニアから情報収集しているから、似たような制度を模索しているのだろうが、日本としてはマイナンバーカードをさらに有効活用していくことは確かだ。

日本の納税システムに関して、スマホ申告と同時期にスタートしたのがコンビニのQR納付。まだ筆者も活用したことがないが、「PayPay」みたいな感じで納税できるというのだから、若い人には抵抗感がないのかもしれない。政府としては、キャッシュレス化を推進していくため、令和7年までに4割程度を目指すとしている。

このほか、 大法人の電子申告が義務化されることに合わせて国税庁は、デジタルガバメント推進の観点から、マイナポータルを活用し、企業が行う手続のオンライン・ワンストップ化を図る計画だ。まずは、法人設立に関する手続に関して、法人設立届出書を始めとした15手続について、2019年度中にワンストップ化を実現するため準備を進めている。最低資本金制度がなくなって、誰もが比較的簡単に会社を設立できるようになったが、手続きが簡便化するのは有難いことだ。若者の起業意欲の促進だけでなく、定年後の自身の強みを活かしたプチ起業など、さらに増えることを期待したい。できることなら、オンライン化によるインセンティブを設けてもらえると有難い限りだ。現状だと、司法書士にお願いして、オンライン申請すると、定款・印紙代の4万円がかからなくなり、さらに会社謄本が一通500円(通常600円)で取得できる。オンライン申請の普及を目指すなら、個人で申請するならば、司法書士にお願いするよりもさらに“お得”になることを期待したい。

このほか、国は2020年11月を目途に、青色事業専従者給与に関する届出などの手続もオンラインでできるように準備を進めている。
また、IT化時代を強烈に感じる計画としては、税務相談の効率化を図るため、新たな相談チャンネルとして、チャットボットなどを導入していくという。IT化に付いていくのがやっとの高齢世代にとっては、何のことか意味がよく分からないだろう。税務当局としては、電話による相談の一元化も落ち着き、電話相談以外での新たな相談チャネルという意味で、相談業務の効率化を進めたいわけで、デジタル世代にとっては、電話も面倒だと考える人も少なくないだろうから、十分に可能性を感じる取り組みとして評価したい。

少し先の話になるが、年末調整の簡便化も時間の問題だ。企業にとって負担となっている年末調整についても、生命保険会社などとの連携により生命保険控除証明書などをデータでやり取りできるようにし、簡素化させていきたいらしい。国税庁では、第一歩として、そのためのソフトウエアを無料で配布する予定で準備を進めているようだ。筆者としては、年末調整などの制度はこの際、廃止してしまい、国民全員が確定申告する方向にもっていくのが理想だと思っている。年末調整がなくなれば、サラリーマンが多い日本では、国民にとって面倒な作業が増えるが、今の日本は「便利さ」を売り物に、サラリーマンの“税”に関する意識を低めている。「低めている」というのが言い過ぎなら、税に関する意識を麻痺させていると思う。唯一、消費増税など直接かかわってくるときだけ、税に関する意識は高まるが、それ以外に国民が税金の使われ方を厳しく監視していく意味でも、1年に1回ぐらいは、自身の生活において税と向き合うときが必要だと感じる。

さて、国は将来的に、マイナポータルを活用し、確定申告の簡素化も念頭に置いているようで、確定申告が必要な納税者は控除証明書等の情報をマイナポータル経由で、一括で入手をして、そのデータを自動入力して確定申告書を作成することができるような仕組みを検討している。

国税と地方税の納税連携についても予定されており、源泉所得税は、地方税の共通納税システム導入により実現していくようだ。筆者の個人的な感想だが、納税の連携が進んだら、国税と地方税、徴収する窓口も一本化し、届け出などの書類も減らしてくれたら有難い。経理も社長がやっているような零細企業では、国税を納めたと思っていたら、地方税の納税もあったり、ちゃんと納税しようとして思っていてもついつい日ごろの仕事で失念しがちだ。将来的に効率化されることに期待したい。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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