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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:国税庁 CRSにより海外口座情報189万件入手 税逃れ監視強化

国税庁は、海外の税務当局と金融口座情報を交換するCRS(共通報告基準)により、2019年11月末時点で日本の個人や法人が海外に保有する口座情報189万件を入手したと発表しました。国税庁では富裕層や企業による国際的な税逃れの監視に力を入れており、今後はこうした情報を税務調査に活用するとしています。

CRS情報の自動的情報交換の実施状況

CRS(共通報告基準)とは、非居住者に係る金融口座情報を各国税務当局間で交換するために、同基準を適用する国同士が、それぞれの国の金融機関に開設された相手国居住者の口座情報を年1回、自動的に交換する仕組みをいいます。

例えば、日本と英国であれば、日本の銀行に英国人が作った預金口座の情報を日本から英国の税務当局に送り、逆に日本人が英国の金融機関に開設した預金口座の情報が英国から日本の税務当局に送られてくることになります。

資産運用の国際化によって海外に資産を保有する者が増加する一方、海外資産に関する情報を国税当局が把握することが困難であることを踏まえ、複数の国が協調して取り組むことで納税者の所得を正確に補足することがCRSの狙いとなっています。

CRSの対象となる金融機関には、銀行だけでなく保険会社や証券会社も含まれ、交換される口座情報は、口座保有者の氏名・住所、納税者番号、口座残高、利子・配当等の年間受取総額等とされています。

日本では、2018年に情報交換を開始し、初回の情報交換においては、国税庁は日本居住者に係る金融口座情報55万件を64か国・地域から受領しました。

我が国にとって2回目となる情報交換では、令和元年11月末時点で日本居住者に係る金融口座情報約189万件を85か国・地域から受領しました。

入手情報が大幅に増加した理由としては、初回の交換では、残高1億円超の口座などを対象としたのに対し、2回目の交換では残高1億円以下の口座なども加わったことがあります。

(出典:国税庁記者発表資料)

CRS情報を活用した相続税調査事例

相続税調査においてもCRS情報が海外資産の把握に活用されています。以下の事例は、CRS情報を活用して相続税の申告漏れを把握したものです。

 

<事例の概要>

被相続人Aの相続税申告書を検討したところ、相続財産として海外資産の計上はなかったものの、受領したCRS情報からX国の預金について相続税の申告漏れが想定されたため、調査に着手した。調査の過程で当該海外預金が相続財産である事実、さらにAが生前にX国において不動産を保有していた事実を把握し、それぞれの資産について相続税の申告漏れがあったことが判明した。

CRS情報の活用のイメージ

国税庁においては、受領したCRS情報を活用し、利子・配当等の申告漏れや相続財産の申告漏れを把握するほか、国外送金等調書・国外財産調書などの各種調書や既に保有している様々な資料情報等と併せて分析することにより、課税上問題があると見込まれる者を抽出し、税務調査を実施するとしています。

今後はCRSにより蓄積された海外資産情報を活かした税務調査が本格化していくことになります。

 

【CRS活用例①】

例えば、相続税の税務調査において、死亡者情報、CRS情報、相続税の申告内容等を突合させることにより、海外資産に係る申告漏れを発見する端緒となります。

 

【CRS活用例②】

国外財産調書の記載内容とCRS情報の海外口座残高を突合した結果、金額に開差がある場合には、国外財産の記載漏れを発見する端緒となります。

また、CRS情報から海外口座残高が5,000万円超であると認められるにもかかわらず国外財産調書が未提出であれば、提出が求められることになります。

徴収共助にもCRSを活用

徴収共助とは、税金の滞納者の資産が外国にあるときに、その国の税務当局に税金徴収の協力を依頼する制度をいいます。

2018年8月には、日本の税金を滞納していたオーストラリア人男性について徴収共助制度を使って約8億円を徴収したという事例が報道されました。

国税庁によれば、「徴収の分野においても、受領したCRS情報を活用し、外国税務当局への徴収共助の要請等を行っております。」としており、今後は徴収共助を使い、CRSで情報を得た国外財産を差し押さえるといったケースも見られるかもしれません。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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