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上場準備会社が知っておいて欲しい近年の状況3つのこと

はじめまして、CFOサポート株式会社 代表取締役の三橋です。監査法人からキャリアをスタートし、リクルート等を経て、2社のIPOを経験したことから、現在、上場を目指す会社の支援等を行っています。
今回の記事では、私の経験に加えて、様々な専門家の方と会話をする中で、上場準備会社に知っておいて欲しい3つのことについて、お伝えしたいと思います。

1.監査法人との契約が困難になっている

上場申請時には監査法人が作成する監査証明書(過去2期分の監査証明書等)が必要であるため、監査法人との監査契約が必須です。以前は監査法人も上場準備会社の監査契約を問題なく締結していましたが、昨今の公認会計士の不足や、上場準備会社のリスクの高さ、工数に対する報酬の金額等を理由として、監査法人との契約が容易ではなくなっています。「特にBig4と呼ばれている、EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、PwCあらた監査法人と上場準備会社が監査契約を締結することは非常に難しくなってきている」と証券会社の方や監査法人の方から耳にします。

そのためか、中堅規模の監査法人が積極的に上場準備会社の監査契約を受けているようです。監査法人は契約を締結する前に、ショートレビューという短期的な調査を行います。調査項目は企業の概要、資本政策、ガバナンスの状況、規程関係、内部統制の状況、内部管理体制、現在の会計処理等多岐に渡ります。昨今の監査法人の状況においては、ショートレビューすら受けてもらえないケースも少なくないようです。従って、上場準備会社は、早い段階から監査法人対応が出来る人材を配置する事を検討する必要があります。

2.CFOが就任していても経験によっては安心出来ない

CFOはChief Financial Officerの略で最高財務責任者の事です。いろいろなケースがありますが、中途で就任されるCFOは大きく分けて2つのタイプに分かれるのではないかと考えています。

それは、「金融機関出身のCFO」「監査法人出身のCFO」です。当然それぞれの経験によって異なりますが、前者は資金調達やIR等に強みがあり、後者は管理部門構築や監査法人との会話等に強みがあります。ただし、「金融機関出身のCFO」「監査法人出身のCFO」いずれにしても、管理体制の構築が出来ない、経理の実務を把握出来ない等の可能性もあるため、上場を目指す場合は、CFOのバックグラウンドや実務経験に応じて、経験豊富な方を別途採用しなければならないケースがあります。

企業のステージや役員構成、そしてCEOの考え方によって、CFOに求められる役割は様々あります。資金調達に特化する役割、IPOに向けて監査法人・証券会社・金融機関対応を含めた管理部門を統括する役割、M&Aや新規事業で活躍する役割等様々です。どのタイプのCFOも会社にとって必要な役割ですが、上場準備会社においては、一般的にはCFOが監査法人対応を含めた管理部門を統括する役割が要求される事が多いです。CFOにそのような経験がない場合、もしくはそういった事に時間を割けない場合は、別途経験豊富な方を採用するか、外部のコンサルタントに依頼して、推進していく必要があります。

3.経験豊富な経理人材の採用が困難になっている

監査法人にショートレビューを受けてもらえる事になった際、必要になるのが、監査法人対応の窓口となる方の存在です。一般的には、CFOもしくは、経理の管理職等が想定されますが、経験豊富な経理人材の採用は難しくなってきています。私が事業会社で財務経理部門をマネジメントしていた頃も、経理人材の採用には本当に苦労しました。そもそも経理経験者は転職市場に多くなく、更に、良い方はすぐに就職が決まってしまうためです。経理ポジションを募集すると、公認会計士の方からも一定数応募がありますが、経験に対して希望年収が高いことや、他の社員との相性等を鑑みると採用には慎重になるケースが少なくありません。私が採用をした際も、結局は事業会社の経理経験者を採用しました。

また、私の知り合いの会社で、「若手公認会計士を採用出来たので、監査法人担当をしてもらう予定です」といった会社がありました。その方のキャリアを伺ったところ、監査法人経験がなく、監査経験もないとのことでした。このような場合、公認会計士の資格を持っていても経理実務に明るくないため、監査法人対応は難しいことが想定されます。そのような場合は、別途経験豊富な方を採用するか、外部のコンサルタントに依頼して推進していく必要があります。

以上、今回の記事では3つの観点で上場準備会社が上場を目指す上で注意すべき点を紹介しました。昨今の状況においては、監査法人との契約締結が難しくなってきている事から、監査法人の対応をする方の採用が重要になります。もちろん、報酬等を鑑みた際、採用することが難しい企業もあると思います。そういった状況においては、企業のカルチャーにフィットするが経験が浅い方を採用し、外部のコンサルタント等に協力を仰ぎながら、IPOに向けて推進していくといった進め方も選択肢の一つです。専門家の中には、事業会社の中でマネジメント経験があり、社内の人員の育成にも関与してくれる方もいますので、そういった専門家と共に、時間をかけて社内の管理体制を強化していくという進め方もあると思います。

今回の記事が、上場準備会社やそういった企業を支援されている方々に対して、少しでも貢献できれば幸いです。

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著者: 三橋秀一

CFOサポート株式会社 代表取締役/中央大学商学部客員講師

監査法人トーマツ出身の公認会計士。リクルート等を経て、(株)LITALICOでマザーズ上場、(株)アンビスホールディングスでジャスダック上場を経験。「自身の経験から複数の企業や個人に貢献したい」という思いから、2020年1月にCFOサポート(株)を設立。中小企業やIPOを目指す企業への業務支援、CFOや財務経理でキャリアを構築する個人への支援を行っている。また中央大学商学部客員講師も努め、毎年150名超の大学生に会計士の魅力や就職に役立つ情報を伝えている。
■CFOサポート株式会社
https://cfosupport.net/

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