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酒井克彦の「税金」についての公開雑談~レディ・ゴダイバとチョコレートのゴディバ~

令和2年1月、イギリスのロックバンド、クイーン(Queen)が来日し、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。ボーカルのフレディ・マーキュリー(Freddie Mercury)亡き後ではありながらも、アダム・ランバート(Adam Lambert)によるボーカルは素晴らしく、筆者も感動しました。さて、今回はクイーンの名曲に登場する、税を巡る欧米の有名な故事をご紹介します。

Like Lady Godiva

今回のライブでも演奏されたクイーンの代表曲に、「ドント・ストップ・ミー・ナウ(Don’t Stop Me Now)」という曲があります。

その曲では、「I’m a racing car, passing by like Lady Godiva」と歌われています。

「まるでレーシングカーがレディ・ゴダイバ(Lady Godiva)のように走り抜ける」と歌っているのですが、このレディ・ゴダイバについては、ラファエル前派の画家ジョン・コリア(John Maler Collier, 1850年1月27日 – 1934年4月11日)の画いた1898年頃の作品として有名な「ゴダイヴァ夫人」があるのでご存じの方も多いでしょう。

悪税から民を救ったレディ・ゴダイバ

ここにいうレディ・ゴダイバは、裸で馬にまたがって町に出たという逸話があります。

この英米で広く信じられている漠然とした伝説を少しだけご紹介しましょう。

領民に対して情け深いレディ・ゴダイバ夫人が、領主の課す税金があまりにも高いので抗議をしたところ、領主から「裸で馬にのって町内を横断すれば税金を安くしてやる」といわれたことから、同夫人は本当に裸で馬に乗って町内を横断したといいます。

その際、町の人々は、レディ・ゴダイバに恩義を感じて、その姿を見ないよう、カーテンを下したという逸話があります。

しかし、このとき、一人だけのぞき見をしたトムという男性がいます。

以来、ピーピング・トム(Peeping Tom)といえば覗き見をする人間の代名詞となり、英語の俗語で、覗き魔のことをそのように呼ぶわけです。

さて、英米で広く知られるこのレディ・ゴダイバの逸話に則り、ヨーロッパでは、増税反対のための街頭抗議デモを行う際、ゴダイバ夫人の故事にならい、スキンカラーのボディスーツをまとった女性が白馬にまたがり、ねり歩くパフォーマンスを行うことがあるといいます(Businesswoman in Godiva-style protest, BBC News, Thursday 19 September, 2002)。

チョコレートは贅沢品?

チョコレートメーカーで有名な「ゴディバ」社の名前が、このレディ・ゴダイバに由来することはつとに有名です。

フランス語的な発音が採用されているためなのか、日本では、一般的に「ゴダイバ」とはいわずに、「ゴディバ」と呼ばれています。

ところで、例えば、イギリスの付加価値税では、チョコレートがぜいたく品扱いされているため、一般の生鮮食品などのような軽減税率の適用はなく、標準税率(20%)が適用されています。

この点、とても分かりづらいのですが、イギリスでは、チョコレートビスケットには標準税率が適用されるのに対し、チョコレートがコーティングされたチョコレートケーキとなるとぜいたく品とはならず軽減税率の対象になるという話もしばしば話題になります。

チョコレートのゴディバの由来となったレディ・ゴダイバは税金を下げるために裸で馬に乗ったのですが、チョコレートケーキの税金が安く扱われるのであれば、彼女も本望でしょう。

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著者: 酒井克彦

中央大学法科大学院教授/法学博士

中央大学法科大学院教授。法学博士。現在、税務会計論・租税法などを担当。一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。単著に『スタートアップ租税法〔第3版〕』、『クローズアップ保険税務』、『クローズアップ事業承継税制』他5冊のアップシリーズ、『所得税法の論点研究』(財経詳報社)、『裁判例からみる所得税法』、『裁判例からみる法人税法〔3訂版〕』、『裁判例からみる税務調査』(大蔵財務協会)、『レクチャー租税法解釈入門』(弘文堂)、『プログレッシブ税務会計論Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』(中央経済社)、『アクセス税務通達の読み方』(第一法規)、『キャッチアップ改正相続法の税務』、『キャッチアップ外国人労働者の税務』、『キャッチアップ保険の税務』(ぎょうせい)など。その他、論文多数。
■一般社団法人アコード租税総合研究所
http://accordtax.net/
■一般社団法人ファルクラム(FULCRUM)
http://fulcrumtax.net/

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