国家公務員に高い倫理観が求められていることは一般に広く理解されているでしょう。また、その点については、国家公務員倫理法(平成11年法律第129号)が示しているところです。もちろん、税務職員にも高い倫理が求められるわけですが、今回はかかる倫理観について注目したいと思います。
国家公務員倫理法の目的
まず、国家公務員倫理法1条を確認してみましょう。
国家公務員倫理法1条《目的》
この法律は、国家公務員が国民全体の奉仕者であってその職務は国民から負託された公務であることにかんがみ、国家公務員の職務に係る倫理の保持に資するため必要な措置を講ずることにより、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保することを目的とする。
このような法の姿勢からも分かるように、国家公務員に求められる倫理レベルは相当に高いものであるといえるでしょう。
スターのサインとお土産
山田洋次監督の『男はつらいよ』シリーズに「旅と女と寅次郎」(第31作・昭和58年8月公開)があります。
主人公の車寅次郎が、都はるみ演じる失踪中の演歌歌手・京はるみと佐渡島へ二人旅をするというロマンティックな話です(余談ですが、「京はるみ」という役名は、都はるみがデビュー時に名乗るはずだった芸名だそうです。)。
その後、はるみは興業スタッフに見つかり、連れ戻され、またスター生活に戻るのですが、そうした騒動があってからしばらく経って、はるみは東京の葛飾柴又に「寅さんにお世話になったお礼に」と挨拶に訪れます。
突然スターが来たとあって、団子屋とらや(寅さんの実家)や帝釈天参道の商店街は大騒ぎとなるわけですが、とらやの隣の朝日印刷所の社長(タコ社長)は、ここぞとばかりにたくさんの色紙を抱えて来ます。
とらやのおばちゃんが、「なによ、そんなにたくさん持ってきて」というと、タコ社長は、「え~まあ、助けると思って頼むよ。税務署にははるみちゃんのファンがたくさんいるんだから」と答えるのです。
税務署にいつも追われているタコ社長は、はるみのサイン色紙を税務職員に配って、あわよくばお目こぼしを得ようという魂胆だったわけです。