売上は、企業の目的たる商品やサービスを販売することです。当該取引が成立したタイミングで、会社は売上を計上します。契約や取引実態により売上の計上タイミングは異なりますので、頻出パターンを中心に見ていきましょう。※今記事ではB to Bビジネスを行っている企業を対象としています。
請負契約

請負契約は、契約で目的物が明確に定められている契約で、目的物を完成、納品し、クライアントの検収が完了した時点で売上を計上します。
- (例) ソフトウェアの受託開発
- ソフトウェアを作成、納品し、クライアント検収が完了した時点で、売上計上を行う
ここで注意したいのは、納品=売上計上ではないということです。あくまで、クライアントの検収が完了した時点で売上が立つことになります。月末に納品が完了していても、クライアントの検収完了が翌月3日でしたら、売上計上は翌月3日になります。決算月で、当該ズレが出てしまうと、業績に大きい影響を与えてしまうため、注意しましょう。
なお、請負取引の契約書には、通常みなし検収の文言を含めます。これは、納品後、一定期間、クライアントから異議申し立てがなければ、検収されたとみなすものです。一定期間は契約によって様々ですが、一週間から一ヶ月位の期間が多いでしょうか。クライアントから検収の通知や、検収書を取得するのが難しかったり、手間がかかる場合は、みなし検収の効力を持って売上を計上するようにしましょう。
先述の検収完了日により売上計上を行う期がズレてしまう問題は、納品日を20日にし、みなし検収を10日間にするなど、納品日とみなし検収期間を上手く組み合わせることで一部解消できるでしょう。
準委任契約
請負契約と比較されるのが、準委任契約です。準委任契約は、事務処理の委託を目的としており、事務が処理された時点で売上を計上します。通常、1ヶ月や1年などの、期間を定めます。請負契約と異なり、目的物の納品が存在しないのが特徴ですね。
- (例) ソフトウェアの保守
- 既に完成済のソフトウェアの保守業務を契約(1ヶ月更新)。保守作業が発生しようとしまいが、1ヶ月が経過したタイミングで売上計上
請負契約と準委任契約の比較
改めて、請負契約と準委任契約の特徴を表で整理しておきましょう。その他、瑕疵担保責任の有無など、相違点はいくつかありますが、今回は売上に関するテーマなので、割愛します。
着手金
実務上、請負契約、準委任契約ともに、業務開始時に、着手金を支払うケースが多々あるかと思います。着手金支払時の売上計上可否について見ておきましょう。着手金については、契約上、返還規定がない場合は、着手金を支払った期の売上として良いこととされています。着手金を分割して支払うケースもありますが、支払い手段は違えど、着手金の本質を変更するものではなく、着手金支払い効力が発生した期に売上高を計上します。
ライセンス契約
近年、サブスクリプション型サービス(通称サブスク)と言われる、定額料金を支払い、商品やサービスを利用できるサービスが流行っており、ライセンス契約は典型的な事例です(例:Gsuite、Amazonプライム)。
当該ライセンス契約は、どのような会計処理になるのでしょうか。通常ライセンス系の契約は、使用の可否を問わず、期間に応じて、課金されることが多いでしょう。売上も、期間が満了したタイミングで計上されます。よって、先述の準委任契約と性格が似ていることがわかります。例えば、5月分のライセンス利用期間が完了したら、5月の売上を計上するイメージですね。
ここで、注意したいのが、課金タイミングと、ライセンス利用タイミングが必ずしも比例しない点です。例えば、年額料金を一括で前払いするケースが考えられます。その場合、課金タイミングで、一年分の料金をユーザーから頂いていたとしても、実際利用する期間は、先1年間続くわけですから、課金タイミングで一括で売上計上するのは好ましくありません。課金タイミングでは前受金として処理し、利用する期間に応じて、毎月、売上高に取り崩していく処理が適切ということになります。少し複雑なので、仕訳例で確認しておきましょう。
■仕訳例
1、一年分のライセンス料金96万円の契約を行い、同額の入金があった
(現金預金)960,000 (前受金)960,000
2、1ヶ月が経過し、当該期間分の売上高(96万円÷12)を計上する
(前受金)80,000 (売上高)80,000
以上になります。よって、ライセンス販売を行っている会社は前受金の残高が大きくなりやすい傾向にあるでしょう。
おわりに
ここまで企業が頻出で締結する契約形態を紹介してきました。製品群によって、契約形態が複数存在することもあります。必ず契約書を確認して、適当な時期に売上を計上するようにしましょう。
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