■「仕事しながら受験勉強」を勧める3つの理由

なぜ、専念するよりも仕事と受験勉強を並行させた方がよいのでしょうか。その理由は次の3つです。

●実務経験2年以上でないと税理士になれない

科目受験であれ、大学院免除であれ、税理士登録するのに必ず必要になるのが実務経験です。必要な科目すべてに合格しても、実務経験が2年以上ないと税理士として登録はできないこととなっています。税理士法第三条に次のような税理士資格に関する規定があるからです。

第三条 次の各号の一に該当する者は、税理士となる資格を有する。ただし、第一号又は第二号に該当する者については、租税に関する事務又は会計に関する事務で政令で定めるものに従事した期間が通算して二年以上あることを必要とする。

 一 税理士試験に合格した者

二 第六条に定める試験科目の全部について、第七条又は第八条の規定により税理士試験を免除された者

三 弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。)

四 公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。)

官報合格してから会計事務所に入所して実務経験を積むのでもよいのですが、たいていの合格者は「すぐに税理士として登録したい」と考えるものです。そのため、受験生であるうちに実務経験を積んだ方が時間短縮になります。

なお、メリットは時間短縮だけではありません。会計事務所での経験が会計科目や税法科目への理解を深めるきっかけにもなりますし、受験勉強で得た知識が実務での効率向上につながったりします。現場での経験と机の上での勉強の相乗効果も「働きながら勉強」の強みの1つです。

●独立と転職は経験値がモノを言う

独立・開業したての税理士は大抵顧客がゼロです。そのため「いかに集客するか」「いかに信用を得るか」が重要になります。一方、クライアントが税理士を探すときに重視するのが経験値です。特定の分野での経験を積み、研究を重ねている人ほどオファーが集まります。登録前に経験を積んでおけば、その分独立後の経営が軌道に乗りやすくなるのです。

また、勤務時代に経験を積み、顧客の信頼を得ておくと、独立後に新規の顧客の紹介につながったりします。勤務税理士として転職するにしても資格だけでなく経験もあった方が選択肢は広がります。登録後のキャリアを考えるなら、勉強と経験を並行した方がメリットは大きいのです。

●お金がなければ何もできない

受験勉強中は何かとお金がかかるものですが、このお金の問題は「晴れて税理士になったら解決」とはなりません。まず登録費用として30万円近くかかります。登録後は年1回の税理士会費だけでなく、勉強代も必要です。毎年の税制改正の理解だけでなく、顧問先で生じた問題解決には深い知識が必要なのです。これには、1冊2千円から5千円かかる専門書で勉強する他、様々なセミナーを受講して研鑽を積むことが求められます。税理士会では会員税理士向けに様々な無料研修を催していますが、これだけだと不十分なのです。

独立開業にもお金がかかります。自宅なら既述の登録時費用と図書研究費、毎年の税理士会費とソフト代くらいで済みますが、事務所を借りるなら家賃や備品にもコストをかけなくてはなりません。こういった「税理士になった後にかかるお金」は登録してすぐ稼げるわけではありません。勉強しながら働いてお金を貯めておいた方が安心です。