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令和2年度税理士試験終了!コロナ禍は本番にどう影響した?

新型コロナウイルス感染症で誰もが緊張を強いられる今年、税理士試験が例年通り実施されました。ただし、感染拡大防止対策が徹底されたためか、今年の試験はいつもとは違った様相を呈していました。

■コロナ禍で資格試験中止が相次ぐが、税理士試験は実施に

今年2月以降、深刻化した新型コロナウイルス感染症の影響は、多くの資格試験や検定試験にも及びました。通常、試験会場は「密閉空間・密室場所・密接場面」の三密になりかねない環境になるからです。感染拡大の懸念から、司法試験や弁理士試験の実施が5月に延期された他、一部の簿記検定や語学検定の試験が中止されました。

税理士試験もコロナによる感染者・死者数が激増した3月には例年通りの実施が危ぶまれましたが、無事、8月に試験が実施される運びとなりました。

■2020年税理士試験は大混乱

しかし、まったく影響がなかったわけではありません。4月・5月の緊急事態宣言後、6月以降再び感染者が急増しました。その影響もあってか、思わぬ事態に受験生が振り回される場面もありました。

●受験票送付も試験日も例年より遅れる

例年「受験票は6月送付、試験日は8月上旬」の税理士試験でしたが、今年は7月中旬以降に受験票が送付され、8月中旬に試験が実施されました。受験票が届かないと試験会場が分からないわけですが、感染防止対策をいかに講じるかという視点からなかなか決められなかったものとみられます。

【コラム】コロナの影響で税理士試験実施に黄色信号!? 試験会場はギリギリまで未定

●幕張メッセだったはずなのに…突然の変更で戸惑いも

5月に入って感染者数・死者数が徐々に落ち着きはじめたものの、予断を許さない状況が続きました。そのため、大人数を収容でき、かつ一人ひとりの距離を保てるイベント会場が受験会場に選定されました。

しかし6月下旬以降、都市部を中心に感染者数が再び増加、また7月22日に政府が大規模イベントの人数制限の緩和の延長を決定しました。これを受け、国税庁は8月に入り、千葉県の幕張メッセで受験予定だった受験生の約半数が他の3会場での受験に変更しました。直前期の対策で精いっぱいの受験生にとってこの急な変更は負担になったことでしょう。SNSでも「もうホテルを押さえたのに…」というつぶやきが散見されました。

【8月6日速報】受験票に注意!2020年令和2年度(第70回)税理士試験の試験場の変更(千葉県「幕張メッセ」会場の受験者)について

●入場前の体温チェックで行列も

コロナ禍が終息しない状況での試験実施に伴い、今回は厳重な感染防止対策が講じられました。新型コロナウイルスに感染している人はもちろん、37.5℃以上の熱があるなどで感染の疑いのある人は受験不可とされたのです。

さらに受験当日もサーモグラフィによる計測が実施され、体温が37.5℃以上であれば受験できなくなりました。この体温チェックでなかなか受験会場に入れず、行列となったところもあったようです。

●「マスク着用」など感染拡大防止を徹底

受験はマスク着用が必須とされ、アルコール消毒も呼びかけられました。試験時間以外のソーシャルディスタンスの保持についても注意されたようです。また、どの受験会場も消毒と換気が徹底されました。

なお、受験会場の周辺で専門学校の講師が声援を送ったり人材紹介会社がチラシを配布したり…というのが恒例行事でしたが、これはコロナ対策として自粛されたようでした。

■今年の試験は実務家注目のテーマがちらほら

では今回の試験の傾向を見てみましょう。ざっと全体を見ての感想は「意外とコロナ禍の影響については出題がない」「近年の注目トピックが問われている」の2点でした。筆者が税理士として気になったのは次の3つです。

●所得税法では「競馬の払戻金」が出題

所得税法の試験では、競馬の払戻金の所得区分についての説明が求められました。この問いは「外れ馬券は経費になるのか」を含め「競馬の払戻金は一時所得か、雑所得か」という実務家の注目テーマです。「馬券訴訟」として知られており、最高裁まで争いました。なお、最高裁判決を受け、国税庁は通達を改正しています。

東京高裁 外れ馬券裁判で逆転判決 自動購入ソフトなしでも雑所得扱い

出題では法令だけでなく通達や裁判例にも触れた上での説明を求めていました。「判例にまで触れよ」というのはやや酷な出題だったのでは、と感じます。

この他、「特定支出控除」が出題されました。実務で登場する場面はほとんどないのですが、昨今働き方が多様化していることから、出題者は給与所得計算上の経費性を問いたかったのかもしれません。

確定申告 スーツ代、書籍代、研修費など税金の特定支出控除でサラリーマンも必要経費

●消費税法では「デジタル課税」「軽減税率」

消費税法では、国外事業者から受けた電気通信利用役務の提供に関する課税仕入れと軽減税率について問われました。「経済のデジタル化に伴う課税(消費税ではリバースチャージ方式)」「令和元年10月からの複数税率」と、いずれも実務では注目されるテーマです。

リバースチャージで申告漏れ指摘  課税当局は消費税を狙い撃ち

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●相続税法では民法改正が反映された

相続税法では特別寄与料や代物弁済など民法の改正が反映された出題がされました。多くの専門学校ではこの改正を織り込んだ対策をしていたかと思われます。

民法の相続分野の規定を見直しへ 関連法案審議開始

「感染拡大防止対策が第一」という状況下での受験は、勉強も含めて例年の比にならないほど大変だったと思われます。今年の受験生の皆様、本当にお疲れさまでした。

 

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著者: 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター

中央大学法学部法律学科卒業後、ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、納税通信、朝日新聞『相続会議』などメディアで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)

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