2月に確定申告を控え、医療費控除と並んで忘れてならないのが特定支出控除だ。サラリーマンの経費が認める制度で、スーツ代や書籍代、自己研鑽のために払った研修費などが、確定申告することで一部税金が戻ってくる。平成24年度税制改正で要件などが拡充され、利用しやすくなった。

特定支出控除の適用者が急増

特定支出控除とは、あまり耳慣れない制度だと思うが、要は、サラリーマンの必要経費を認め、払いすぎた税金が一部還付される制度。一定の要件を満たしていれば、確定申告することで納めた税金が戻ってくる。
従来はそのハードルが非常に高く、適用できる人が極端に少なかった。
旧制度で適用した人は、平成23年⇒4人、平成24年⇒6人。それが、税金の専門誌によれば(国税庁発表資料から)平成25年分の確定申告では、1600人に急増した。一気に約300倍になった計算だ。

適用対象者が増加したのは、平成24年度税制改正により特定支出の範囲の拡大(資格取得費や勤務必要経費の追加)が、平成25年分の所得税から適用されることとなったから。
というのも旧制度は、給与所得控除額を超えるとき、特定支出としてその超えた金額を給与所得控除額に上乗せできるという内容。

たとえば、年収800万円の人であれば、給与所得控除額が200万円になるので、この分を超えた分について特定支出を適用できたわけ。年収800万円の人が、年間200万円以上も必要経費を使うというのは稀だ。
それも必要経費枠は、
① 通勤費
② 転勤に伴う転居費用
③ 研修費用
④ 資格取得費(弁護士、公認会計士などの資格は除く)
⑤ 単身赴任時の帰宅費用
に限られていた。

ところが現在の特定支出控除制度は、その年の特定支出の合計額が、以下のそれぞれの金額を超えるとき、その超える部分の金額を給与所得控除に加算して控除できまる。
・その年の給与等の収入金額が1500万円以下の場合 ⇒「給与所得控除額の1/2相当額」
・その年中の給与等の収入金額が1500万円を超える場合 ⇒「125万円」
つまり、年収800万円の人ならば、給与所得控除額「200万円÷2=100万円」を超えれば、その超えた分を特定支出として適用できるわけだ。

「スーツ代を経費で落とす」が、現実的なものに

適用範囲については、上記の①から⑤に加え、
⑥ 職務遂行に直接必要な資格取得費
⑦ 勤務に必要な経費(65万円が上限額)
も計上できる。
⑥「資格取得費」については、弁護士・公認会計士・税理士・弁理士といった資格取得のための費用についても、勤務に必要な資格で会社が証明するものであれば、結果として資格取得に至らなくても対象だ。
⑦「勤務必要経費」は、基本的に職務に関連する書籍、定期刊行物などの「図書費」、制服・事務服・作業服など勤務場所において着用する「衣服費」、職務上関係のある者に対する「交際費・接待費その他の費用」となっている。
図書費については、仕事で必要な書籍、雑誌、新聞などが対象。日経新聞を個人的に定期購読しているケースでは、特定支出として適用できる可能性もある。

「衣服費」については、スーツも特定支出として落とせる。適用要件としては、社内規定でスーツを着用することが定められていること、または、社内規定はないが、勤務場所でスーツなどの着用が慣行になっていれば、特定支出として適用できる。一方で、IT企業など私服の会社も少なくないが、シャツやジーンズなどの費用は、普段着にもなるので特定支出とは認められないので注意が必要。

交際費にも注目

このほか、「交際費」についてだが、基本的に特定支出となるのは 「接待等の相手方が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者であること」。「支出の目的が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者との間の親睦等を密にして取引関係の円滑化を図るものであること」。「支出の基因となる行為の形態が、接待、供応、贈答その他これらに類するものであること」という要件を満たしている必要がある。つまり、取引先とのお付き合いで、自腹を切ってその場の支払いした場合などが該当する。同僚や部下など、社内でのお付き合いに関しては特定支出には該当しない。

特定支出控除の適用に当たっては、確定申告時には、資格取得費も勤務必要経費も支払いを証明する領収書や会社の証明書が必要となる。必要書類は、国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/campaign/h25/Jun/01.htm)から取得できる。