国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

東京高裁 外れ馬券裁判で逆転判決 自動購入ソフトなしでも雑所得扱い

馬券を大量かつ継続的に購入することは、投資なのかギャンブルなのか争われていた裁判で、またも国側が敗れた。昨年3月、最高裁は同様の争いで納税者に軍配を上げたが、今回の高裁判決で競馬における「投資」判断の基準がより明確になってきた。

外れ馬券の購入費が必要経費にあたるかどうかが争われた裁判の控訴審で、東京高裁(菊池洋一裁判長)は4月21日、必要経費には含まれないとして国の課税処分を認めた一審・東京地裁判決を取り消し、外れ馬券の購入費も必要経費に含まれるとする判決を下した。
控訴していたのは北海道の40代男性。男性は2005年からの6年間で計72億7千万円の馬券を購入し、計78億4千万円の払戻金を取得。この払戻金を「雑所得」として外れ馬券代も必要経費に含めて申告したところ、税務署は「一時所得」にあたると判断、必要経費に算入できるのは当たり馬券の購入費のみであるとして約1億9400万円の追徴課税を行った。男性はこれを不服として提訴していたもの。

所得税法34条は一時所得について、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得」と定義している。そして一時所得の計算上、必要経費として控除できるのは「その収入を得るために直接要した金額」のみ。競馬の場合は「当たり馬券」ということになり、実務でもそのように取り扱われてきた。ただし、払戻金の所得区分について明記されているのは、国税職員に向けた法律の解釈規定である「通達」(所得税法基本通達34-1)のみで、法律には競馬の払戻金が一時所得に該当するとは書かれていない。
馬券の購入スタイルが多様化する中、「営利を目的とする継続行為」としての馬券購入など、従来の課税原則が想定しなかったケースが出てきたが、杓子定規な通達行政と折り合いがつかず、トラブルに発展するケースが多発している。本件はその一例だ。

外れ馬券の購入費をめぐっては、最高裁が昨年3月、大阪の男性が競馬の払戻金を申告せず所得税法違反罪に問われた別の裁判の上告審で、コンピューターの独自ソフトを利用した機械的、網羅的な馬券購入について「営利目的の継続的行為といえ、外れ馬券代も経費に当たる」との初判断を示した。
これを受け国税庁は通達を改正。「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する」という注意書きを加えている。

しかしこの最高裁判決の2カ月後にあたる昨年5月、本件の一審・東京地裁は、北海道の男性の馬券購入方法について「レースごとに自分で予想して購入額を決めており、機械的とはいえない」と指摘。配当金についても「個別の馬券的中による偶発的な利益の集積にすぎず、一体の経済活動とまでは認められない」として、一時所得に当たると結論付けた。最高裁判決との違いについては「馬券の購入履歴などが保存されていないため、最高裁判決の当事者のように機械的、網羅的に購入していたとまでは認められない」と判断。同じ馬券の大量購入でも購入方法によって判断が分かれたため、今回の二審判決に注目が集まっていた。

今回の高裁判決で菊池裁判長は、「男性には馬券を有効に選ぶノウハウがあり、恒常的に多額の利益を上げていた。外れ馬券を含む一連の馬券購入には経済活動の実態がある」と認定。男性が馬や騎手のデータ、予想的中率、配当金額などを検討した上で馬券の購入パターンを考案し、6年間にわたって利益を上げていた点を重視し、「最高裁判決の馬券購入方法と本質的な違いはない」として、雑所得として外れ馬券を含む購入費の全額を必要経費に算入した男性に軍配を上げた。

著者: 河添美羽

税金ライター/熱狂的トラファン

元税金専門紙編集長、現在は税金ライターとして活動。財務省・国税庁にネットワークを持ち、税金問題に独自の目線で切り込む一方で、経済・生活ニュースなど幅広く執筆する。プロ野球は、阪神タイガーズをこよなく愛し、シリーズが始まれば、ほぼ阪神応援に駆け回る。

ページ先頭へ