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春の天皇賞で注目 馬主と税金問題 セレブ気分で一口馬主

5月1日は「天皇賞・春」(京都、芝3200メートル)。有馬記念馬ゴールドアクターがGI2勝目を狙う。京都競馬場は、JRAの平地GI の中で最長距離のレース。前評判の高い実績馬だけでなく伏兵馬にも注目が集まる。ところで馬好きなら、一度は馬主になりたいもの。セレブの代名詞である馬主だが、複数人でお金を出し合い馬主になる、いわゆる一口馬主になることも可能だ。一口馬主の税務問題に迫った。

最近の競馬の話題といえば、16年振りに誕生したJRA(中央競馬会)生え抜き女性ジョッキー、藤田菜七子騎手だ。3月23日には、初勝利を飾り一躍脚光を浴びたが、先日は落馬であわや重大事故になりかけファンをヒヤッとさせた。
競馬好きなら、一度は夢見るのが馬主。基本的に、JRAの正式な馬主になるためには、個人馬主・法人馬主・共同馬主の三形態がある。ただ、いずれも厳しい審査基準があり、中でも個人馬主のハードルは高い。

JRAの馬主になるには

個人がJRAの正式な馬主資格を得るには「過去2ヵ年所得(収入ではない)1700万円以上かつ資産額7500万円(預貯金・不動産・有価証券など)以上」となっている。
馬主の特権としては、馬主協会を通じて馬主席が用意される。またGIに所有馬が出走している場合は、専用の「出走馬主室」で入ることができる。所有馬がレースで優勝した際には、ウイナーズサークルにて行われる表彰式で口取りができる。

JRAには個人馬主・法人馬主・組合(共同)馬主の三形態があるが、筆者の現職時代、法人馬主の調査を行ったことがある。当時は、バブル経済真っ只中、馬自体の購入費用もさりながら、付随費用中の預託料(中心は人件費・飼葉料など)が高額で、廐舎など反面調査したものである。

さて、競走馬に関する税務問題だが、競走馬の耐用年数は4年で償却方法は定額法であり、2歳4月から6歳3月まで月割りで計算する。
購入時期をずらし数頭高額競走馬を購入すれば、中古ヘリコプター並の節税(納税繰延)商品と成り得るが、余程の馬好きは別として、競走馬に対する目利きができなければ、投資額が2度と戻らぬ悪魔の商品となる。

サラリーマンでもなれる一口馬主

富裕層でなくとも、馬主になれるのが組合(共同)馬主だ。3人以上、10人以下の組合員がそれぞれ出資し、共同の競馬事業を行う。
審査基準は、
(1)組合員全員の年間所得額が2年連続で900万円以上
(2)組合財産として1000万円以上の預貯金
となっている。個人馬主や組合馬主になれない場合、一口馬主になるという方法もある。馬主登録のあるクラブ法人が所有する競走馬に出資している会員だ。

一口馬主の形態は商品ファンドである。それぞれが一口馬主クラブとして金融庁の監督下、許認可制で運営が行われている。各クラブは「クラブ法人」と「愛馬会法人」の二つの法人から成立っている。

「愛馬会法人」は匿名組合で、役割は匿名組合契約すなわち実際に会員から出資を募り、出資契約を締結し、競走馬を購入する。「愛馬会法人」はJRA規約上馬主資格を持てないので、JRA馬主資格を持つクラブ法人に対して競走馬を現物出資する。
「クラブ法人」は馬主として出資を受けた馬をJRAに競走馬登録し、出走させたレースの獲得賞金などを「愛馬会法人」に配当する。そして最後に「愛馬会法人」は会員に獲得賞金などを配当する。

会員の出資額は一口数万円から数百万円と幅があり、その配当は獲得賞金総額から諸経費を差し引いたものを会員数で分割したものである。必ずしも高額の出資をしたから配当も莫大であるとの図式は当てはまらず、少額出資でも一獲千金の配当を狙えるところが魅力でもある。

一口馬主の税金問題

1)賞金分配時の源泉徴収税額
JRAから「クラブ法人」に支払われる賞金に対して約10%、「クラブ法人」から「愛馬会法人」に対して支払われる配当に対して約20%それぞれ徴収される源泉所得税は、多くの場 合クラブが国から還付された後、会員に年(又は競走馬の引退時)清算分配される。
「愛馬会法人」から会員に配当が分配される時約20%の源泉所得税が徴収されるが、会員個人で確定申告(雑所得として)した際還付される可能性もある。

2) 消費税の扱いについて
JRAの賞金の中には消費税が含まれているため、「愛馬会法人」から会員に分配される  配当は、支払うべき消費税(賞金に対する消費税から調教師や騎手に渡す進上金分の消費税を控除したもの)差し引き後の金額とされ、結果として消費税の納税を完了したことになる。
ところで、日本の競馬レースでは、8着以内に入賞すれば賞金を獲得できる。その賞金の取り分は、10%が調教師、騎乗した騎手と厩務員がそれぞれ5%、残りの80%を馬主となる。一着にでもなれば、馬主は金銭的にもかなりの収入を得ることができるわけだ。

著者: 松本大路

税金ジャーナリスト/元税務調査官

税務調査官として約13年、都内の税務署などで法人税調査などを行う。その後、外資系生命保険会社の営業職員として約10年間、資産家及び法人、会計事務所向けに、役員退職プランや決算対策などをサポート。現在はフリーの税金ジャーナリストとして活動する。

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