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故大橋巨泉氏に学ぶ相続対策 カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを転々

「11PM」や「クイズダービー」のテレビ司会で知られる元参院議員の大橋巨泉(おおはし・きょせん、本名・大橋克巳=おおはし・かつみ)氏が7月12日、急性呼吸不全のため亡くなった。巨泉氏と言えば、季節によって居住地を変えるなど、早くから資産移転などを行ってきた人物だ。巨泉氏にみる相続税対策を考えてみる。

大橋巨泉氏と言えば、ジャズ評論家・放送作家からテレビ司会者で大活躍した人物という評価が一般的だが、わたしは中学生のころ、親に隠れて盗み見した「11PM」や「ゲバゲバ90分」(共に日本テレビ)で見せていた、満面の笑みをたたえた嬉しそうな司会者のイメージが強い。社会人になってからも、競馬に造詣が深い巨泉氏ならではといえるクイズダービー(TBS)で、豪華出演者に解答倍率を組み込んだ点数を付けたり、巧みなトークで出演者の個性を引き出す光景が頭にこびりついている。
そんな巨泉氏が亡くなったという報道に接し、一時代が終わったなという感慨と共に、あの愛すべき毒舌をもう聞けないのかと思うと寂しさを感ぜずにはおれなかった。

巨泉氏は「セミリタイヤ」を流行らせた人物でもある。20年以上前の話しだが、巨泉氏は50歳代後半から1年のうち、日本を含めた4カ国以上を回り、良い季節だけを堪能しつつ、日本に居るときは芸能関係の仕事をする生活をしていたといわれる。たとえば、春4~5月の2カ月を日本で過ごし、夏6月~9月半ばまでの3カ月半を涼しいカナダで過ごす。秋9月半ばから10月末ぐらいまで再び日本で過ごし、晩秋11月は春のオーストラリア。そして冬12月~3月初旬は北半球ニュージーランドの夏を堪能し、残りの3月はオーストラリアで過ごすような形だったようである。

海外生活の「居所」基準

巨泉氏は1973年にカナダ・バンクーバーに「OKギフトショプ」というお土産店を出店したことを皮切りに、カナダはバンフ・ナイアガラ、オーストラリアはゴールドコースト・ケアンズ、ニュージーランドはオークランド・クイーンズタウンの合計7店を出店していたという。このショップは、日本語・日本円が使えることがウリで、巨泉氏のセミリタイア後の収入源は、ほぼOKギフトショップからだったようだ。
南半球への出店は、カナダと季節が逆の地域で冬場に激減する売上を補う意味があったようで、永住権もカナダ・オーストラリア・ニュージーランドの順に取得している。

さて、わが国の所得税法の「居住者」とは、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定している。
「住所」とは、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」。「住所」とは、その人の生活の中心がどこかで判定される。
ある人の滞在地が2カ国以上にわたる場合、その住所がどこにあるかを判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を行うことになる。なお、「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」である。
租税条約による取扱いは、二重課税防止の観点から、一般的には
①「恒久的住所」、
②「利害関係の中心的場所」、
③「常用の住居」、
④「国籍」
の順に考えて、どちらの国の居住者となるか決定される。

巨泉氏は最晩年、度重なるガン等の手術や放射線・抗ガン剤治療で国内に留まった時期を除いて、日本の非居住者であったことは明白なため、わが国の税金は消費税の他、TV出演などの国内源泉所得税20.42%のみ課税されていたと思われる。

問題は相続税ということになる。平成23年2月18日最高裁判決により国が逆転敗訴した「武富士贈与税裁判」では、1330億円追徴税額のところ還付加算金400億円を上乗せして返還することになったため、その後の国際課税はより明確化された。

平成12年の相続税法改正により、相続または贈与により財産を取得したときから前5年以内に、被相続人(贈与者)または相続人(受贈者)のいずれかが法の施行地に住所を有している場合は、全世界財産に対して相続税・贈与税の納税義務があるとされている。さらに平成25年4月1日より、被相続人・贈与者が日本国内に住所があれば、相続人・受贈者が「外国国籍」であっても、そして相続・贈与する財産が「日本国内財産」「海外財産」問わず、相続税・贈与税の課税対象になるとされた。

この場合の「住所」とは
①住居が何処にあるのか、
②生活を一にする配偶者等の家族・親族の居所が何処にあるのか、
③何処で職業に就いているのか、
④資産が何処に所在しているのか、
を総合的に勘案して決定される。

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