政府が待機児童対策のため、相続・贈与税を見直す方向で検討していることが分かった。相続・贈与された土地について、保育所や幼稚園に貸与する場合は、相続税や贈与税を非課税にする優遇策を設けるようだ。
政府は平成29年度税制改正に向け、相続や贈与で取得した土地について、保育所や幼稚園に貸与する場合、相続税や贈与税を非課税にする税制優遇策の創設を検討している。都市部を中心に、保育所に入れない待機児童問題に大きな改善が見込まれない中、安倍晋三政権が進める保育の受け皿整備を税制面から後押しする。地方自治体の要望を受け、内閣府と厚生労働、文部科学両省が8月末にまとめる平成29年度税制改正要望に盛り込む方向だ。
現行の税制では、土地を相続や贈与する際には、土地の評価額から基礎控除を差し引いた額ごとに10~55%まで8段階の相続税や贈与税がかかる。保育所や幼稚園の用地として貸与する場合に、これを非課税し、用地確保が進みやすくなると期待している。
詳細な制度設計は今後詰める模様だが、非課税措置を受けられる土地の広さなどについては一定の条件を課すものと予想される。というのも、政策の意図と反して、資産家などの相続対策として同優遇税制が歪曲利用されないようにするのと、「金持ち優遇」という批判を受けないような設計が必要となるため。
安倍政権は1億総活躍社会の実現に向け、29年度末までに50万人分の保育の受け皿を確保するとしている。保育士の待遇改善とともに、施設整備に必要な土地の確保が課題となっているが、施設用地の確保では地域住民らの反対も出てくるなど、自治体から環境改善の要望が寄せられていた。
厚生労働省によると、2015年4月時点の待機児童数は前年同期比8.4%増の2万3167人と5年ぶりに増加。夫婦共働きが増え、都市部を中心に保育を必要とする子どもの数は増加している。税制で保育施設の整備をどこまで後押しできるか分からないが、土地持ち資産家にとっては魅力的な税優遇だけに、実現を望む声は多くなっている。