相続税調査では、税の重いペナルティである「重加算税」が比較的課されやすいとの話を聞く。なぜなら、重加算税を課せられる要件に相続税調査がはまりやすいためらしい。相続は一生の間に何度もあるわけではなく、調査になれば調査官が圧倒的に優位といわれる。相続税調査の実態および、重加算税と睨んだときの当局の行動に迫った。

相続税調査においては、圧倒的に課税当局の強さが目立つ。まずはこの数字を見てもらおう。国税庁が公表する相続税調査の実績をまとめものだが、たとえば、平成26事務年度を見ると、1年間の相続税の実地調査件数は1万2406件、そのうち申告漏れ等の非違が見つかったのは1万151件で、非違割合はなんと81.8%にも上るのだ(参考:国税庁から集計)。

この数字は毎年ほとんど変わらず、過去5年間を見ても、実地調査になれば、約8割の確率で申告漏れなどの指摘を受けていることが分かる。
このうち、不正申告の制裁的ペナルティである「重加算税」が課された件数を平成26事務年度で見ていくと、1258件となっており、非違件数に占める割合は12.4%にも上っている。非違件数の1割超が重加算税というのは、他の税目と比較しても相当高い確率で課せられていると言える。

「名義預金」「名義株」がターゲット

相続税調査で調査官がまず目を付けるのが、「名義預金」「名義株」だ。「名義○×」と付くのだから、預金通帳や有価証券などに記載された名前と、実際におカネを出している人が違う商品(モノ)を指す。

この「名義預金」「名義株」の調査では、「財産の帰属」について詳しくチェックしていく。
調査官の話を総合していくと
①預金等の預け入れの原資、株式等購入の原資は誰が負担していたか
②預金通帳・証書、届出の印鑑、キャッシュカード、株券・預かり証等を誰が所持し、管理・運用していたのか。また相続開始時点では誰がおこなっていたのか
③預金や株式の取引の指示を誰が行っていたか
④金融機関からの通知書等の送付先は、名義人のところか、実質所有者のところかを確認
⑤利息や配当金などは誰が受け取っているのか
⑥名義人がその預金を有することとなった経緯・動機
⑦相続人固有の財産の把握と帰属の判断
がポイントになる。

そして、預金通帳・証書、株券・預かり証書等については調査の段階で、保管場所についても入念にチェックしていく。たとえば、そこが被相続人の自宅の金庫なのか、主宰法人内の金庫なのか、銀行の貸金庫等なのかなどを調べる。

また、預金や株式の取引の指示を誰が行っていたかについては、預金や株式取引口座の開設申込書をチェックするだけでなく、払い出し請求書等の筆跡確認をはじめ、銀行や証券会社等の取引担当者に直接聞き取りを行う等の反面調査も行われる。このほか、相続人固有の財産であるかの確認おいては、収入及び財産状況を調べ、「名義預金」「名義株」との比較を行っていく。

さらに、購入原資が被相続人の資金と明らかな場合は、贈与が行われているか否か、贈与税の申告や納税を行っているかについて確認する。こうしたすべてを総合的に判断し、調査官は財産の帰属について判断していくのだ。