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財産債務調書が確定申告からスタート 不提出なら重いペナルティ

来年の確定申告から、一定以上のお金持ちは課税当局に「財産債務調書」の提出が義務付けられる。「なにそれ?そんなの聞いていないよ」といったところで、すでに平成27年度税制改正で決まったこと。課税当局では、お金持ち・富裕層の情報収集に躍起になっている。「財産債務調書」は、従来の「財産及び債務の明細書」が形を変えたものだが、「提出」「正確な内容の記載」を確保するため、インセンティブ措置が設けられている。いよいよスタートする「財産債務調書」とはどんなものなのか、もし提出しなかったらペナルティはあるのか迫った。

課税当局がお金持ち・富裕層の情報収集に躍起だ。そのひとつとして、いよいよ2016年確定申告から提出が義務付けられのが「財産債務調書」。ネーミングからして、なんか大そうな感じだが、一定以上のお金持ちは、自身の財産状況を課税当局に知らせる義務が負わされる。

その基準が、その年分の総所得金額および山林所得金額の合計額が2千万円を超える人で、その年の12月31日現在の総資産3億円以上または国外転出特例対象財産(有価証券等)1億円以上の資産が有る人だ。この辺りの基準になると、一定規模以上の中小企業の社長ならちょうど引っかかってくるだろう。従来、似たような制度として「財産及び債務の明細書」の提出があったが、今回の財産債務調書は、従来よりハードルを高くしている。

そもそも、「財産及び債務の明細書」は、提出義務のある納税者の約40%しか提出されていなかった。また、記載すべき事項も大まかで、金額の記載がないものも多く、課税当局が所得税等の申告の適正性を検証することが困難だった。そこで課税当局では、「提出」「正確な内容の記載」を確保するため、インセンティブ措置を設け、財産債務調書という新たな制度を設けたもの。今年7月に一足早く整備された「国外転出時課税制度」を補完する目的もある。

財産債務調書を提出するインセンティブとは、所得税や相続税に申告漏れがあった場合、財産債務調書に記載がある部分については、過少申告加算税等を5%軽減するというもの。一方で、不提出・記載不備なら、その部分について過少申告加算税等を5%加重する。

過少申告加算税等の5%の加重措置は、本人のみとされ相続人に負わせない。

国外転出時課税制度の補完については、「財産及び債務の明細書」では記載、提出が満足のいくようなものでなかったことから、保有有価証券1億円以上の納税者に財産債務調書の提出義務を課し、併せて有価証券の取得価額も記載させている。

財産債務調書は、所得税・相続税ともにインセンティブ措置の判断の対象となる年分の財産債務調書を提出していなければ、たとえ他の年分の財産債務調書を提出し、修正申告等の起因となる財産を記載していても、インセンティブ措置を受けることはできない。

租税調査研究会の松林優蔵主任研究員・税理士は、「相続税調査シーンにおいても、従来の明細書以上に財産債務調書の活用度合が高まることが予想されます。納税者自身が財産債務調書を作成するのは難しいと思いますので、税理士のサポートが欠かせません」と指摘する。

将来的には、相続税調査などにマイナンバーとあわせて財産債務調書が活用されることが予想される。すべての財産が国に監視される自体がすぐそこまで迫っている。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
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