訪日外国人客を受け入れているホテル業者が、海外で宿泊予約サイトを運営する業者との取引をめぐり、課税当局より相次いで消費税の申告漏れを指摘されている。2015年に導入された「リバースチャージ」の理解不足が一因のようだ。

海外の宿泊先ホテルを、インターネットで直接予約する人が増えているが、海外のサイト運営業者にホテルや旅行会社が手数料などを支払った際の消費税処理でミスが目立っているという。

課税当局では、昨年からホテルや旅行会社に対して税務調査を積極的に行っているが、十数社に計約11億円の申告漏れを指摘したようだ。

消費税は通常、事業者が売上時に消費者などから預かった税額から、仕入れ時に支払った税額を控除(仕入れ税額控除)して課税されるが、事業者の所在地が国内なら課税され、海外なら課税されない。だがネット上のサービスは国境をまたぐことが多く、海外事業者から購入したものには消費税がかからないのはおかしいとの観点から、課税の公平性を保つため、2015年10月から海外業者が宿泊予約やゲーム、広告配信といったネットサービスなどを国内業者に提供したとき、国内業者に納税させる「リバースチャージ方式」が導入された(国税庁 httpswww.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/cross/01.htm)。

「役務の提供」について国税庁では、「事業者向け」の「電気通信利用役務の提供」なのか、「消費者向け」のものなのか、海外の業者が「登録国外事業者」かどうかで分類している。

インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を取るものは、「電気通信利用役務の提供」に含まれる。電子書籍や音楽、ソフトウェア等の配信サービスなどの著作物や、インターネット広告の配信、クラウドサービスの提供などの役務の提供もこの分類だ。この事業者向けの「電気通信利用役務の提供」は、リバースチャージ方式の対象となり消費税が課税される。

一方、消費者向けの「電気通信利用役務の提供」については原則として、日本の税務署が海外の会社から消費税を徴収できる保証がないため、消費税の申告の際、支払った消費税を控除することが認められていない。つまり、事業で使う電子書籍を海外の会社から買った場合、その支払に伴う消費税額は消費税の申告の際に控除できないわけだ。具体的には、「Amazon Web Services(AWS)」「Google Apps」「Adobe Creative Cloud」などは、Web事業者・開発者向けに提供しており、般消費者からもWEBサイト経由で申し込み可能であり「消費者向け」になることから、リバースチャージ方式の対象にならない。

ただし、リスティング広告でよく知られる「Google Adwords」は、リバースチャージ方式の対象になっているので注意が必要だ。

リバースチャージ方式は「当分の間」経過措置により課税売上割合が95%以上の場合は適用されないが、この経過措置の見落としが多く、今回ホテル業者が当局に狙われた模様。

国税OB税理士の話によると、「消費税については、効率的に深度ある調査を実施するように指示されており、厳しい目が向けられている」としている。