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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:税金の取り立ても海外まで~『徴収共助』を活用し国外財産から8億円を徴収

税金を滞納した場合には国税当局から財産の差し押さえ等の滞納処分を受けることとなりますが、滞納者の財産が国外にある場合には、税金の徴収は困難と言われていました。しかし昨今、『徴収共助』という制度を使って、国外財産から8億円を回収したという注目すべき新聞報道がありました。

■新聞報道

以下は、本年9月17日付の読売新聞の記事の一部です。


豪と協力 滞納税8億徴収
国税 現地男性の口座から

東京国税局が豪州の税務当局に租税条約に基づく徴収共助を要請し、日本で贈与税を滞納していた豪州人男性の預金から約8億円を徴収していたことが、関係者の話でわかった。税金滞納者が保有する国外財産から滞納分を徴収するのは難しく、日本の国税当局が海外当局の協力で億単位の税金を徴収したのは初めて。

関係者によると、豪州に住む男性は数年前、日本在住の親から数十億円の贈与を受けた。相続税と贈与税について規定する相続税法では、日本の居住者から財産を相続したり、贈与を受けたりした場合、双方の国籍やその財産が国内か海外にあるかを問わず、日本で相続税や贈与税を納める義務が生じる。

しかし、男性は税金を納めず、東京国税局の複数回の催促にも納付を拒否。同国税局は日本にあった男性の預金を差し押さえる形で一部を徴収したが、延滞税などを含めた約8億円が未納のままとなった。

同国税局は豪州にある男性名義の預金口座を把握しており、2018年に国税庁を通じて豪州の税務当局に徴収共助を要請。豪州当局は要請から数カ月経過後、男性の口座を差し押さえ、この中から約8億円分を日本へ送金したという。[…]

■『徴収共助』とはどのような制度か?

新聞報道にあった『徴収共助』とはどのような制度なのでしょうか?
一般に、税金を徴収するための権限は日本国外で行使することはできません(執行管轄権の制約)。そのため、税金の滞納者が国外に財産を有していたとしても、日本の税務当局がその国外財産について差し押さえをするといった滞納処分を行うことはできません。
しかし、財産の所在地国が税務行政執行共助条約(いわゆる「マルチ条約」)や「徴収共助」の規定を含む二国間租税条約の締約国である場合には、『徴収共助』という枠組みを使って国外財産から税金を回収することが可能となります。

『徴収共助』とは、税金の滞納者の資産が国外にある場合に、各国の税務当局が財産の所在する国の税務当局に要請して、その滞納税金を取り立ててもらうという仕組みをいいます。

下の図は徴収共助の仕組みを表したものです。

【図:徴収共助の仕組み】

 (出典:国際戦略トータルプラン)

A国当局が納税者に課税したところ(上図①)、納税者は税金を支払わずに、財産をB国に移転したとします(上図②)。A国当局は、国外にある資産を直接差し押さえるといった処分はできないため(上図③)、代わりに財産の所在するB国当局に税金の取り立てを要請します(上図④)。要請を受けたB国当局は、A国当局に代わってB国にある納税者の財産から税金を徴収し(上図⑤)、それをA国当局に送金する(上図⑥)といった流れになります。

■『徴収共助』を要請できる国は53カ国

2018年8月現在、徴収共助の要請ができる国は53カ国に達しています。

関係者によると、日本の国税当局がこれまで徴収共助の要請をしたのは7カ国で、今回の事案を含めて8億4000万円を徴収したとのことです。

税務行政執行共助条約は平成 25(2013)年 10 月に発効し、締約国も増えています。また、既存の二国間租税条約に徴収共助の規定を追加する条約改正が順次行われるなど、徴収共助のネットワークは年々拡充しています。国税当局では、保有する部内情報や租税条約に基づく情報交換制度を活用して滞納者の国外財産の保有情報などの把握に努めており、国内財産から徴収することができない場合には、徴収共助の制度を積極的に活用して租税の徴収に取り組むこととしています。

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租税調査研究会事務局
tax@zeimusoudan.biz

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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