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【非営利法人の会計と制度】その4 ~②社会福祉法人の会計について~

非営利法人の会計と制度において、その1では非営利法人全体について法人類型別の制度改正と会計基準などの概要を、その2では学校法人の制度と会計を、その3では公益法人の制度と会計をお伝えしました。今回は、その4の②として、社会福祉法人会計の特徴について少し詳しく解説します。

1. 社会福祉法人会計の特徴について

(1)計算書類等の体系

社会福祉法人会計における財務報告の枠組みは、厚生省令として定められた社会福祉法人会計基準になります。この省令により、社会福祉法人は計算書類(資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表)のほか、その注記事項、附属明細書及び財産目録を作成しなければなりません。なお、社会福祉法人の会計年度は、3月末を決算日とすることとされており、それ以外の決算日(変則決算)は認められていません。

 

社会福祉法人の収支計算書は企業会計におけるキャッシュフロー計算書に、また事業活動計算書は企業会計における損益計算書に類似していますので、基本的な計算構造をイメージすることができます。また、貸借対照表は、企業会計でよくみる流動性配列法と同様であり、基本的には企業会計と同様であると考えることができます。

 

社会福祉法人会計基準の大きな特徴として、①法人全体の計算書類、事業区分の計算書類及び拠点区分の計算書類を作成すること、また②これらの計算書類の附属明細書には、その区分に対応した財務情報のほか、拠点区分の計算書類の附属明細書としてサービス区分に関する財務情報を記載することが求められている点にあります。

 

このような計算書類等の体系からすると、事業や拠点が多い社会福祉法人の場合、計算書類等のページ数が非常に多くなります。これらの計算書類等のうち、会計監査人の法定監査の対象となるのは、法人全体の計算書類等のみとなります。

 

(参考)

【事業区分】社会福祉事業・公益事業・収益事業の区分

【拠点区分】各施設の区分(例えば特別養護老人ホーム・児童養護施設など)

【サービス区分】各拠点の各種サービスの区分(例えば訪問介護・デイサービスなど)

 

(2)基本金と基本財産

法人が事業開始等にあたって施設整備等のための寄付を受入れた場合、その借方項目として現金預金や固定資産が増加し、その貸方項目として収益(施設整備等寄付金収益)が計上されます。ここまでは企業会計と同様なのですが、この会計処理に伴って、社会福祉法人では同額の基本金組入額(事業活動計算書の費用)と基本金(貸借対照表の純資産)が計上されます。

 

その結果、事業活動計算書では、施設整備等寄付金収益(特別収益)と基本金組入額(特別費用)が計上され、損益インパクトがゼロとなります。

 

(3)国庫補助金等特別積立金とその取崩処理

施設・設備の整備のために国庫補助金が交付された場合、その借方項目として現金預金が増加し、その貸方項目として収益(施設整備等補助金収益)が計上されます。

 

ここまでは企業会計と同様なのですが、この会計処理に伴って、社会福祉法人では同額の国庫補助金等特別積立金積立額(事業活動計算書の費用)と国庫補助金等特別積立金(貸借対照表の純資産)が計上されます。その結果、事業活動計算書では、施設整備等補助金収益(特別収益)と国庫補助金等特別積立金積立額(特別費用)が計上され、損益インパクトがゼロとなります。

 

また、これによって取得した固定資産について減価償却が実施された場合、社会福祉法人では同額の国庫補助金等特別積立金の減少と国庫補助金等特別積立金取崩額(事業活動計算書の費用のマイナス)が計上されます。その結果、事業活動計算書では、減価償却費と国庫補助金等特別積立金取崩額(費用のマイナス)が計上され、損益インパクトがゼロとなります。

 

(4)その他

①積立金と積立資産

積立金は企業会計の積立金に類似し、また積立資産は公益法人会計の特定資産に類似しています。社会福祉法人は、内部留保(利益剰余金)を将来の特定目的の使用のために、その純資産の範囲内で、積立てることができます。この純資産サイドの積立金に対応して、その財源を資産サイドで積立てたものが積立資産ということになります。ただし、社会福祉法人は非営利法人ですから、利益剰余金を分配することはせず、その事業目的のために使用しなければなりません。

 

②固定資産の減損処理

社会福祉会計基準では、固定資産の減損について、企業会計とは異なる規定が設けられています。この点は、公益法人会計基準と同様です。

2. 最近の改正について

社会福祉法人会計基準については、令和2年9月に改正があり、令和3年度から「合併・事業の譲渡若しくは譲受けが行われた場合には、その旨及び概要」を計算書類に注記することが必要になりました。また、これに伴って、会計基準の運用指針も改正され、組織再編について会計処理(統合であると判断された場合は適正な帳簿価額で資産・負債を引継ぎ、また取得と判断される場合は公正な評価額で資産・負債を引継ぐ会計処理)が通知されました。

 

非営利法人の分野において、このように組織再編の会計処理が規定されたのは初めてのことであり、画期的なことであると考えられます。

 

次回は、医療法人の制度について、その特徴などを詳しくお伝えします。


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著者: 佐久間清光

公認会計士さくま会計事務所/代表

元あずさ監査法人パートナー
さくま会計事務所(代表)公認会計士 佐久間清光

内閣府公益認定等委員会「公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議」委員
日本公認会計士協会「非営利法人委員会公益法人専門委員会」委員
株式公開準備会社(非常勤)監査役
フェリス女学院(非常勤)監事
神奈川大学非常勤講師
現在は各種法人向けに会計監査や業務支援を、また個人向けに簿記スクールを実施している。

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