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【非営利法人の会計と制度】その2 ~②学校法人の制度・会計~

最近、非営利法人の分野にホットな話題が多く生じています。
非営利法人の会計と制度その1では、①非営利法人の分野全体における監査の種類・法定監査の法人数・監査報酬(年間)平均額、②最近の制度改正と今後の動向、③法人類型別の会計基準の特徴と改正の動向をお伝えしました。
その2では、法人類型別の制度や会計について、その特徴や今後の動向を掘り下げて解説します。前回は、その第1弾として①学校法人の制度改正と今後の動向をお伝えしましたので、今回は②学校法人の会計について、その特徴などを詳しくご説明します。

1. 学校法人会計の特徴

学校法人会計における財務報告の枠組みは学校法人会計基準であり、その計算書類は、①資金収支計算書並びにその内訳表(資金収支内訳表、人件費支出内訳表)及び活動区分資金収支計算書、②事業活動収支計算書及びその内訳表(事業活動収支計算書内訳表)、③貸借対照表及びその明細表(固定資産明細表、借入金明細表、基本金明細表)となります。なお、活動区分資金収支計算書は、知事所管の学校法人は作成を省略することができます。

資金収支計算書は企業会計におけるキャッシュフロー計算書に、また事業活動収支計算書は企業会計における損益計算書に類似していますので、基本的な計算構造をイメージすることができます。また、貸借対照表は、企業会計でよくみる流動性配列法ではなく、固定性配列法であるものの、基本的には企業会計と同様であると考えることができます。

しかしながら、学校法人会計の大きな特徴として、貸借対照表の純資産に「基本金」の区分があり、その増加額(組入額)と減少額(取崩額)を事業活動収支計算書に計上する点が挙げられるでしょう。

2. 基本金について

(1)基本金の基本的な考え方

誤解を恐れずに申し上げると、基本金は企業会計における積立金に類似すると考えることができます。ここで簡単な事例で説明します。

仮に、受取った寄付金100憶円を財源に100憶円の校舎を年度末に建設したとします。この場合、事業活動収支計算書に収益として受取寄付金100憶円が計上されます。仮に基本金を設定しないとすれば、留保利益が100憶円となります。そうすると、授業料や補助金の金額を引き下げてほしい、あるいは給与の水準を引き上げてほしい、という要望が出てくると思います。しかしながら、この受取寄付金100憶円は校舎の建設代金として全て使っていますので、手元に資金は残っていません。そこで、学校法人会計では純資産に基本金100憶円を計上し、未処分利益の相当する金額(学校法人会計では、これを「繰越収支差額」といいます)をゼロにするのです。

基本金の繰入(または取崩)は事業活動収支計算書で計上します。その結果として、事業活動収支計算書における繰越収支差額と貸借対照表におけるそれは一致します。なお、事業活動収支計算書「基本金繰入前当年度収支差額」は当年度の純資産増加額と一致します(つまり、企業会計における当期純利益に相当します)。

先の事例を計算書類で示すと次の通りになります(金額の単位は、正式な計算書類では円単位ですが、この事例では億円とします)。

このように、事業活動計算書では、当期純利益に相当する金額100憶円が計上されるのですが、基本金100憶円を組入れることによって、未処分利益に相当する繰越収支差額をゼロ円にするのです。

次に、翌年度の事例として、建物の減価償却費が2憶円、それと同額の事業収入が2憶円とします。他の条件を考慮外とすれば、基本金100憶円に対応する建物の帳簿価額は98憶円になります。減価償却費は支出を伴わないので、手元に残った資金2憶円を学校法人会計では貸借対照表の資産の部に減価償却引当特定資産に計上します。この特定資産は、この建物の減価償却が完了した時、建物を建替えるための財源とします。

なお、以上の事例では建物の建設代金を全て自己財源(もともとは寄付金)で賄いました。しかしながら、建設時に受取寄付金や受取補助金等の事業活動収入がゼロで、その建設の財源を借入金や未払金で賄った場合は、次のように、借入金等で賄った部分の金額だけ基本金が計上されません。

翌年度に、建物の減価償却費が2憶円、それと同額の事業収入が2憶円、この収入2憶円を借入金の返済に充当したとします。学校法人会計では、この借入金の返済2憶円の金額を基本金に計上します(未払金は支払った金額を計上します)。なお、建物の帳簿価額は98憶円になりますが、手元に資金がありませんので減価償却引当特定資産を計上することはできません(手元にあれば計上します)。

基本金は、企業会計の積立金と同様であると前述しましたが、将来必要な使途(事例では建物の建替え)のために「積立てるべき金額」と考えることもできるでしょう。

仮に、借入金100憶円を返済して基本金100憶円を計上しても、借入金の返済資金以上の資金を稼がなければ、資産サイドに特定資産を計上することが全くできないことになります。この場合、建替え時に再び建設資金を借入れることが必要になります。

 

(2)基本金の種類

上記(1)の事例は、学校法人会計における基本金の考え方を解説するために、いわゆる第1号基金を取り扱いました。学校法人会計では、基本金として、次の資産が対象となります。

  1. 第1号基本金:設立当初や新たな学校の設置もしくは既設の学校の規模拡充のために寄付または自己資金で取得した固定資産額
  2. 第2号基本金:新たな学校の設置もしくは既設の学校の規模拡充のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭その他の資産相当額
  3. 第3号基本金:基金として継続的に保持し運用する金銭その他の資産相当額
  4. 第4号基本金:恒常的に保持すべき支払資金相当額

 

なお、学校法人会計の「基本金」以外の特徴については、その概要を前々回に掲載しましたので、そちらでご確認ください。

次回からは、公益法人について、その特徴や課題を詳しくお伝えします。


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著者: 佐久間清光

公認会計士さくま会計事務所/代表

元あずさ監査法人パートナー
さくま会計事務所(代表)公認会計士 佐久間清光

内閣府公益認定等委員会「公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議」委員
日本公認会計士協会「非営利法人委員会公益法人専門委員会」委員
株式公開準備会社(非常勤)監査役
フェリス女学院(非常勤)監事
神奈川大学非常勤講師
現在は各種法人向けに会計監査や業務支援を、また個人向けに簿記スクールを実施している。

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