非営利法人の制度と会計において、その1では非営利法人全体について法人類型別の制度改正と会計基準などの概要を、その2では学校法人の制度と会計を、その3では公益法人の制度と会計を、その4では社会福祉法人の制度と会計をお伝えしました。今回は、その5の①として、医療法人の制度について少し詳しく解説します。
1. 医療法人とは
医療法人とは、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設、所有することを目的とする法人をいいます。
その種類として、医療法人には、(1)社団たる医療法人と(2)財団たる医療法人があります。さらに、(1)社団たる医療法人には、①持分の定めがある法人と②持分の定めがない法人が存在します。ただし、(1)社団たる医療法人の①持分の定めがある法人は、2006年6月の医療法改正によって、その施行後は新設が認められていません。
その制度改正の趣旨は、非営利性の徹底を図ることにあると言われていますが、厚生労働省が公表している種類別医療法人数の年次推移によれば、2018年末の全国の医療法人の54,593のうち、持分の定めがある医療法人社団が39,716も存在し、医療法人全体の約7割を占めています。
(注1) 特定医療法人:医療の普及と向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ公的に運営されることで、国税庁長官が承認した医療法人です。40床以上の病院または15床以上の救急告示診療所であること、社会保険診療などに係る収入が全収入の80%超であること、役員の同族割合が3分の1以下であること、役職員の年間給与総額が3,600万円以下であることなどの要件があります。法人税率が優遇されますが、収益事業が行えないことになります。
(注2) 社会医療法人:その所在する都道府県の医療計画に記載されている法定事業(緊急医療、へき地医療、災害医療など)を実施する設備や体制を整えていることなどによって、都道府県知事が認可した医療法人です。