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【非営利法人インフォメーション】その2 ~①学校法人の制度と今後の動向~

非営利法人の分野について、前回までは、その1として、①監査の種類・法定監査の法人数・監査報酬(年間)平均額、②最近の制度改正と今後の動向など、③法人類型別の会計基準の特徴と改正の動向をお伝えしました。今回からは、その2として、法人類型別の制度や会計について、その特徴や今後の動向を掘り下げてご説明します。今回は、その第1弾として、①学校法人の制度改正と今後の動向について解説します。

1. 学校法人の制度改正について

私立学校法は、2004年の改正時に理事会の法定化や外部役員の選任義務化など重要な改正がなされた後、2014年の改正時に所轄庁による必要な措置命令等の規定整備、理事の忠実義務規定の明確化などが図られました。今回(2019年)の改正は、主に次の通りであり、2020年4月から施行されています。

 

① 中期計画の策定

文部科学大臣所管の学校法人は、中期的な計画の策定が義務付けられ、その作成に当たっては学校教育法による認証評価の結果を踏まえて作成しなければなりません。中期計画の詳細な内容や期間については各法人の判断に委ねられています。今まで中期計画を策定・公開している法人は決して多くはありませんでしたから、今回の改正を契機として、公認会計士・税理士などによる支援を受けて策定する法人も多かったのではないでしょうか。

 

② 役員の責任の明確化と監事機能の充実

役員(理事・監事)の善管注意義務と任務懈怠による損害賠償責任の明文化、悪意又は重過失によって第三者に損害を与えた場合の役員の損害賠償責任の明文化、役員の連帯責任、理事による競業・利益相反取引の規制と特別に利害関係のある理事が理事会決議に参加できない旨などが明文化されました。

また、理事の行為によって法人に著しい損害が生じるおそれがある場合、監事による差止請求権が認められるなど、監事の権限の強化が図られました。

これらの制度改正が施行される前には、各法人で寄附行為の改訂が通常必要となりましたので、2019年度は、その手続・作業が大変であったと思われます。

 

③ 情報公開の充実

役員報酬基準の設定が義務付けられ、文部科学大臣所管の学校法人はこの基準の公表も必要になりました。また、財産目録・貸借対照表・収支計算書・事業報告書については、従来は在学生等の利害関係者のみへの開示が義務付けられていましたが、今回の改正により、大学を設置する学校法人には、一般市民への開示も義務付けられました。また、役員・評議員については、従来はその人数のみの公表でしたが、今回の改正により。役員等名簿による氏名の公表が義務付けられました。

2. 今後の動向について

今回の制度改正に伴う「学校教育法等の一部を改正する法律」の附帯決議では学校法人制度の改善が引き続きの検討事項とされており、また同法律の附則では改正法の施行後5年を目途として施行状況の検討とその結果に基づく所要の措置を講ずることが規定さています。さらに、自民党の行政改革推進本部「公益法人等のガバナンス改革検討チーム」からは、2019年6月に次の提言がなされています。

 

① 評議員会の位置付けを、諮問機関から決議機関へと変更すること。

② 理事・理事会・監事の権限・義務、代表理事の選解任、理事会の招集手続・議事録作成義務その他の定めを、公益法人制度に対する提言内容を導入した後の公益財団法人における同様の定めと同水準の内容となるように変更すること。

③ 公益財団法人と同様の会計監査人制度を定めた上で、一定規模以上の学校法人に会計監査人の設置を義務付けること。

④ 実効的な公益法人のガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめた学校法人ガバナンス・コードの策定を推進すること。

⑤ 公益法人・社会福祉法人のいずれにおいても定められているものと同内容の組織に関する訴えの制度を定めること。

⑥ 役員の違法行為について、公益法人・社会福祉法人のいずれにおいても定められているものと同内容の罰則を定めること。

⑦ 理事長・寄付行為という用語を、公益法人・社会福祉法人と同様に、代表理事・定款へと改めること。

⑧ 学校法人の解散に際する残余財産の帰属先等について、所官庁に対する申請・承認を必要とする仕組み及び学校法人の解散に当たり要する費用等について学校法人に開示させる仕組みを設けること。

 

以上の提言を受けて、2019年12月から2020年12月まで、文部科学省のもとで「学校法人のガバナンスに関する有識者会議」が開始されることになりました。その結果を受けて、今後どのような改正がなされるか現時点では未確定でありますが、ガバナンス改革に向けた主要な論点・課題を見て取ることができます。制度が変更される時、そこには様々な専門家が関与する機会が生じますので、その動向を注視することが有用であると思います。

 

次回は、学校法人の会計について、その特徴などを詳しくお伝えします。

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著者: 佐久間清光

公認会計士さくま会計事務所/代表

元あずさ監査法人パートナー
さくま会計事務所(代表)公認会計士 佐久間清光

内閣府公益認定等委員会「公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議」委員
日本公認会計士協会「非営利法人委員会公益法人専門委員会」委員
株式公開準備会社(非常勤)監査役
フェリス女学院(非常勤)監事
神奈川大学非常勤講師
現在は各種法人向けに会計監査や業務支援を、また個人向けに簿記スクールを実施している。

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