寄与度利益分割法
寄与度利益分割法とは、対象となる国外関連取引について、日本法人と国外関連者の営業利益を合算し、合算した営業利益をそれぞれの法人の利益獲得への寄与度に基づいて分割する方法をいいます。この手法は、双方の営業利益が双方の寄与度に等しくなるような取引価格を算定する方法といえます。
営業利益を分割するための基準(分割ファクター)については、利益の発生に寄与したと認められるものの中から選ぶことになりますが、一般的には人件費、減価償却費、試験研究費などがよく用いられます。
この手法は、公開データベース等を使わずに、企業内部のデータを使って利益を分割するため、比較対象取引が見つからない場合であっても独立企業間価格を算定できるというメリットがあります。
計算の流れは次の通りとなります。
①国外関連取引から得られるA社とB社の営業利益を合算(合算利益の算定)する
A社とB社の双方にあるべき営業利益を配分するために、一旦A社の営業利益とB社の営業利益を合算します。
②分割ファクターを算定する
合算利益を分割するための分割ファクターを計算します。ここでは、人件費と減価償却費が利益に貢献していると考え、これらを分割ファクターとします。
これにより合算利益の分割割合は、A社:B社=30:10=3:1となります。
③合算利益200を分割ファクターの比率で分割する
これにより、A社とB社のそれぞれの寄与度に応じたあるべき営業利益は次のようになります。
- ・A社のあるべき営業利益=200×3/4=150
- ・B社のあるべき営業利益=200×1/4=50
④配分後の営業利益と実際の営業利益を比較し、差額があれば所得移転額となる。
残余利益分割法(RPSM:Residual Profit Split Method)
残余利益分割法は、日本法人と国外関連者の双方に無形資産がある場合に採用される方法です。例えば、日本法人は独自の研究開発の成果として多数の特許や製造ノウハウを有し、国外関連者では独自のマーケティング活動により、同業他社にはないような充実した販売網や販売ノウハウを有している場合などが挙げられます。
この手法は、日本法人と国外関連者の営業利益の合算額(合算利益)を2段階で配分します。
第1段階では、合算利益のうち、通常の活動から生み出される利益(基本的利益)をそれぞれに配分し、第2段階として残額(残余利益)をそれぞれが有する無形資産の価値に応じて配分するという流れになります。
計算の流れは次の通りとなります。
①国外関連取引から得られる各当事者の営業利益を合算する(合算利益の算定)
②基本的利益を各当事者に配分する
基本的利益とは、無形資産を使用しない基本的な活動から通常得られる利益をいいます。基本的利益は企業情報データベース等から基本的活動のみを行なう企業を抽出し、それらの営業利益率の平均値等を用いて計算します →第1段階。
③残余利益を各当事者に配分する
合算利益から基本的利益を差し引いた残額を残余利益といいます。残余利益は双方が無形資産を活用することによって得られた利益と考えられます。よって、この残余利益を各当事者が無形資産の開発のために支出した費用(例えば、R&Dや広告宣伝費)等の比率で各当事者に配分します →第2段階。
④基本的利益と残余利益を合計し、双方のあるべき営業利益を算出する
配分後の営業利益と実際の営業利益を比較し、差額があれば所得移転額となります。
RPSMを採用するかどうかを決める上で重要なのは無形資産の保有の有無です。
通常、日本の親会社は何らかの無形資産を保有しているので、海外子会社が無形資産を保有しているかどうかの判定がポイントとなります。
もし、海外子会社が無形資産を保有していなければTNMMという手法が採用され、海外子会社が無形資産を保有していると判定されるとRPSMを採用するというのが一般的です。
このように無形資産の有無は手法を選択する上で極めて重要です。
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