移転価格税制は、海外の関連企業との取引を「独立企業間価格」で行うことを求めるものです。日本では独立企業間価格の算定方法として6つの方法が規定されています。今回は、実務上主流の方法となっている取引単位営業利益法(TNMM)を取り上げます。

日本では、独立企業間価格の算定方法として、次の6つの方法が規定されています。

今回は、このうち取引単位営業利益法について説明します。この方法は、営業利益率の水準を比較する方法です。

取引単位営業利益法(TNMM:Transactional Net Margin Method)とは

取引単位営業利益法とは、関連者間取引と、非関連者間取引における営業利益率の水準を比較し、独立企業間価格を算定する方法です。

「営業利益率」としては、次のものが利用されています。

売上高営業利益率=営業利益/売上高

総費用営業利益率=営業利益/総費用(売上原価+販管費)

ベリー比=売上総利益/販売費及び一般管理費

ベリー比(ベリーレシオ)とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、売上総利益を販売費及び一般管理費で除することにより算定する利益水準指標です。ベリー比は販売仲介業者のように、機能やリスクが限定的で、その利益が販管費に比例する企業への適用に有用と言われていますが、実際に使われるケースは少ないと思われます。

取引単位営業利益法は、企業情報データベース等から、検証しようとする法人と比較可能性があると思われる法人を何社か抽出し、それらの企業の営業利益率の平均値等を利用します。このように、公開データから比較対象企業を発見できるため、独立企業間価格の算定において主流の方法となっています。

ここでは、売上高営業利益率を使うケースを示します。

上の<図>において、A社の国外関連取引から生ずる売上高営業利益率は10円/200円=5%となります。一方、A社と類似の事業活動を行う第三者(比較対象企業)は、10%の営業利益率を獲得しています。

この10%の営業利益率を用いて独立企業間価格を算定します。まず、A社のあるべき営業利益を計算すると、200円×10%=20円となります。この場合、独立企業間価格は第三者への販売価格(200円)からあるべき営業利益の額(20円)と販管費の額(30円)を差し引いて計算します。よって、独立企業間価格=200円-(20円+30円)=150円となります。

A社は、国外関連者から独立企業間価格150円を超える160円で仕入れていることから、差額の10円が所得移転額となります。

この取引単位営業利益法は、類似の事業活動を行う比較対象企業を抽出し、その営業利益率と同じ水準になるように取引価格を設定する方法といえます。