税務だけでなく、会計・法務・経営の視点を融合させた総合的なアドバイスを行っているみつき税理士法人/みつきコンサルティング株式会社。いまや国内のみならずアジアを拠点に広げているグループ代表・公認会計士・税理士である神門(かんど)剛氏の、これまでのキャリアや今後のビジョンに迫ります。(編集:レックスアドバイザーズ 市川)
公認会計士としてのキャリア
公認会計士を志したきっかけについて教えてください。
神門:小さい頃はガキ大将タイプで、悪さをしては学校の先生に叱られていました。決められたことを、決められた通りにこなすのが苦手で、親も手を焼いたと思います。
40歳を過ぎて税理士資格を取得し、事業会社の経理から一転して開業した父の影響があったのだと思いますが、高3の夏、「公認会計士になろう」と思い立ち、大学入学後に試験勉強をはじめました。近くに資格専門学校がなかったため、通信講座で勉強しました。
公認会計士試験に合格したのは1994年、大学を卒業した次の年です。
その後、監査法人でなく税務事務所に、ご入所されていますね。
神門:合格者の殆どは監査法人に就職するのですが、天の邪鬼な私は、アルバイトを続けながら専門学校の税理士講座に1年近く通い、税務の基礎を習得ました。その後ようやく就職するのですが、選んだのは監査法人ではなく、資産税に定評があった税理士事務所です。
1995年夏のことですから、まだバブルの余韻が残っていた頃です。不動産の相続税評価額が高く、相続税が払えなくて命を絶つ方がいるような時代でした。税理士によって税額が大きく異なることがあるクリエイティブな仕事だと魅力を感じていたので、資産税に強い事務所に就職したわけです。
ところが、入ってみると、配属されたのは資産税の部署ではなく、主に生命保険を扱っている部署でした。朝から夕方までは、法人の節税対策に適う生命保険を売り歩き、夕方から未明まで(それに週末)は税金関係の原稿を書く、という生活がスタートしたのです。その原稿が会計業界との唯一の接点というくらい、税の実務からは離れていました。でも、不思議と不満はなく、与えられた目の前の仕事に無心で打ち込む毎日でした。
そんな生活を8ヵ月ほど続けたところで、会計士の実務補習所で一緒だった友人が、私が資産税の仕事に就けていないことを不憫に思ったのか、山田&パートナーズに誘ってくれて、転職をしました。
山田&パートナーズに入所してから独立に至るまでのキャリアについて伺いたいと思います。
神門:私が配属されたのは、会計監査やIPO支援、M&A等での法人税務コンサルティングが中心の部署でした。資産税の仕事もあったのですが、資産税の世界にどっぷり浸かりたかった私としては、またもやアテが外れたわけです。
その後、1999年になると、山田グループ内で独自の監査法人※を立ち上げることになり、その設立メンバーとして参画しました。山田グループには2004年まで在籍し、法人対応の税務・会計コンサルティングの経験を積ませて頂きました。
(※優成監査法人、現在は太陽有限責任監査法人)
ハードワークに加え、日々の座学にも全力投球しましたので、殆ど余暇がなかったのが、この時代です。憑り付かれたように専門書を貪り読み、それが直ちに実務で活かされ血肉となり、周囲からの評価が高まり励みになり、更に没頭する好循環が回り続けたのです。ときに徹夜もしましたが苦にならず、この時代に会得した知識・経験が、その後の展開の土台となりました。
いまでも記帳代行や月次・年次の税務チェックが会計業界の仕事の本流ですが、これらとは全く異なるスポット高付加価値型の事務所モデルの先駆者が山田グループの創設者である山田淳一郎先生と思います。今にして思えば、このような山田グループの方向性と、飽きっぽい性分の私とは、親和性が抜群で、充実した時代でした。
山田淳一郎先生は業界でも伝説的な人物ですよね。
神門:山田先生は、公認会計士・税理士としての専門性とビジネスマンとしての収益性を高い次元で両立した、という点で空前絶後の人物で、いまでも公認会計士としての模範です。2019年末に鬼籍に入ってしまいましたが、山田先生には感謝の念しかありません。大声で怒る、何事にも厳しい人で、入所してからの数年間は、師の前では直立不動、毎度冷や汗をかきながら、とにかく頭だけはフリーズしないようにするのが精一杯でした。
そんな絶対的な存在であった師ですが、徐々に緊張が解けていって、お伴したスキー場で些細なことで激高されたこと、ペーパードライバーだった私を助手席に乗せた師の運転でのゴルフの帰りに私が爆睡していたことなど、思い出すと吹き出してしまいます。「首を長くして待ってたよ」入所初日に言われたあのときの言葉を胸に、師に近づけるように精進を続けています。

独立のきっかけを教えて下さい。
神門:独立願望があったわけではないし、組織からも大変魅力的なポジションのオファーがあったのですが、私にとって最もチャレンジングな選択肢として、東京でのゼロスタートを選びました。そんなわけで、自分本位の私利私欲もなく、自分のためではなく顧客のために尽くそうという意識が自然にできていたように思います。
当然ながら顧客は全て前職に置いていきましたので、収入はゼロです。特に営業活動はしませんでしたが、ありがたいことに、それまでご縁のあった税理士等の先生方からポツリ、ポツリと案件をご紹介頂けました。M&Aにおける会計・税務面の対応、価値評価、デューデリジェンス、グループ内再編にまつわる税務・会計・法律コンサルティングなどがメインでした。しばらくすると会計監査の顧客も増えてきて、一時は上場企業の監査もやりましたが、途中で私にはマネジメントし切れなくなり、他の監査法人に監査業務は移管しました。
法人内での仕事や特徴・魅力・やりがい
神門:For the Client(顧客第一主義)を一貫して標榜しています。近年ご相談が多いテーマは事業承継で、私の経験値が最も高い分野でもあります。
資産税に強い会計事務所にとっては、事業承継というと基本的には相続税対策、すなわち親から子への株式の移転にかかる税コストをどうやって安くするか、というのがメインテーマです。一方で、M&A仲介会社であれば、M&Aに至らないと商売にならないので、事業承継というと内心は「とにかく会社を売りましょう」となります。
しかし、当社には、資産税のプロもいれば、M&A専門のコンサルタントもいます。両者が同居しているので、彼らが1つのチームで事業承継の課題解決に当たることができるのですね。「とにかく税金を下げましょう」とか、「会社を売りましょう」というような一方向の提案ではなく、幾つかの方向性、数ある対策の中から最適解を提示できるのが、当社の強みです。
経営についてと今後のビジョン

経営の面白さ・大変さについて教えてください。
神門:およそ会計ファームの守備範囲と考えられている領域の仕事は、殆ど扱ってきました。その中には、現在はサービスを提供していない業務、拠点もあります。生来の好奇心が悪さをした結果なのですが、数多くのトライ&エラーを繰り返してきました。
会計ファームは典型的な労働集約型サービス業ですから、その経営者としてのマネジメント対象も専らヒトになります。人間ほど多面的な存在はありませんから、そこが面白くもあり、大変でもあります。この点でも、数多くの失敗をしてきました。
今後のビジョンについてはいかがですか?
神門:いつでも、どこでも、誰のご相談でも受ける、ニーズ対応型ファームとして、顧客に鍛えられ、成長してきました。今後も同様です。特に、弊社の専門領域である事業承継サービスにおいて、専門性と生産性に磨きをかけ、もって顧客満足に貢献していきたいと思います。
会計業界の業務の一部は、AIや他業種のプレイヤーに長期的にはリプレイスされると思います。しかしながら、自らの守備範囲を固定化せず、顧客ニーズに傾聴すれば、サポートできる領域は幾らでも拡がります。そのような柔軟な思考をもったファームにとっては、未来は明るいと思います。
みつきグループは、税理士法人が発祥母体ですし、私自身も公認会計士・税理士です。そして、私自身のキャリアがそうであるように、税務・会計・法律と広範囲に渡って強いという特性をベースとしたサービスを引き続き提供していきます。
また、中小企業もアジアに出ていかざるを得ない状況に対応すべく、バンコクに自社拠点を設けていますので、一層の活用を図っていきたいですね。
KaikeiZine読者へのメッセージをお願いします
神門:会計事務所ないし会計系コンサルティング会社を志す方、または既に所属している方に、僭越ながら私からのアドバイスがあるとすれば、まずは1つ、差別化できる強みを持つこと。それは、組織再編税制かもしれないし、デューデリジェンスの場数、特殊な価値評価にも対応できる経験、或いは営業スキルかもしれません。それを起点にして、少しずつで良いので得意領域を増やすこと。直接的に経験するOJTだけでは限界があり、座学による補完との両輪を動かす必要があります。
そして、顧客の声に耳を傾け続けること。こちらが、より大事だと思います。
【編集後記】
常に顧客のことを考え、最適な提案をしてこられた神門代表。これからも顧客の声に応え続けるニーズ対応型ファームとして運営されていくのですね。ありがとうございました!
みつき税理士法人/みつきコンサルティング株式会社
●設立
2005年10月
●所在地
東京都新宿区新宿1-9-1 NEOX新宿ビル6F
●理念
For the Client すべては顧客のために
●企業URL
http://www.mitsukijapan.com/
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