海外取引事案で2411億円の申告漏れ把握
経済取引のグローバル化が一層進展している中、輸出入取引や海外投資を行う法人は中小企業においても年々増えており、これに伴い海外取引先に対する外注費の水増しなどの不正計算が増え続けている。これに対して国税庁では、国外送金等調書や租税条約等に基づく情報交換制度を活用して重点的に取り組んでいる。
元事務年度は1万3116件に実地調査を行い、3636件から2411億円の非違を把握し、このうち497件は不正計算を行っていたことが判明。その不正所得金額は183 億円にのぼる。主な事例としては、「外国親会社との棚卸取引に係る独立企業間価格の算定誤り(申告漏れ所得金額約11億円)」、「外国関係会社に対する事業支援金を経費科目に仮装(申告漏れ所得金額約4億円)」、「海外の代表者名義口座を利用して事業譲渡収益を除外(申告漏れ所得金額約1億円)」など。
また、広島国税局調査部の事案では、機械製品販売会社Aは、CRSに基づく非居住者金融口座情報から、軽課税国にある海外子会社Bの関連口座に多額の蓄積があるものの、申告書に適正に反映されておらず外国子会社合算税制上の問題があるものと想定された。このため、実地調査を行ったところ、Aが外国子会社合算税制の対象になるとして修正申告書が提出された。当局では実地調査により更に検討したところ、新たに軽課税国に所在する海外子会社Cを把握するなど、当該法人に係る外国子会社合算税制の適用誤りを把握し、その申告漏れ所得金額は1年間で5億7800万円におよび、4億7900万円を追徴している。※CRS(共通報告基準)
各国の税務当局は、自国に所在する金融機関等から非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定 に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対しその情報を提供している。