第12回は第11回に続き、ヒト・モノ・カネのうち「ヒト」、特に人事制度の運用について紹介します。

人事制度と聞くと、人事制度の制定をイメージされる方が多いと思います。前回も述べましたが、私は中小企業こそ人事制度が重要であると考えています。さらに、人事制度の制定よりもその運用こそが重要と考えています。

人事制度を導入するためには、「粗くてもいいからなるべく早く制定し、運用に重きを置き、運用しながら少しずつ良いものに変えていく」という考え方を前回述べました。
私は、最初から完璧な人事制度の制定を目指すのではなく、社長の社員に対する思いや社員の状況等を反映し、運用しながら、改善を積み重ねていく事が重要と考えています。
最初から100点を目指さず、70点程度を目指して、運用しながら、80点、90点とより良いものを目指していくという考え方が大事です。社員の観点からも「今の人事制度には改善の余地があり、状況に応じて会社は変えていってくれる。」といった前提がある方が、より良い人事制度になる期待を持つことが出来ます。
過去、人事制度の制定・変更・運用に関わった会社で、実務を運営する上で気をつけておくべき点を紹介します。

1.人事制度について説明し、理解してもらう

人事制度は会社が一方的に制定して終わりではなく、社員に説明して、理解してもらう必要があります。理解無くして、成功はありません。何故、このような制度にしたのか、目的や狙っていることは当然として、制定の背景も含めて説明することが重要です。
過去、背景の説明を疎かにした会社がありましたが、社員が会社の状況や社長の思いを理解出来ず、会社に不信感を持ってしまったケースもありました。
全員に100%理解してもらうことは難しいのですが、説明会を設けて、質疑応答に誠実に対応することが重要です。

2.評価は明確に説明出来るように実施する

人事制度に従って、年間、半期、四半期等で評価を実施します。評価結果について、評価者は被評価者に対して、丁寧に説明する必要があります。何故、この評価なのか、どうすればより良い評価になったのか等、明確かつ具体的に説明することが重要です。
評価が良い社員からは特に異論は出ないことが多いのですが、評価が悪い社員は納得しないことが多いです。本人の認識と上長の認識に齟齬があると、揉める原因になります。
その際、丁寧に説明することが大事ですが、それでも納得されない方やモチベーションが下がって回復しない社員は近い将来退職する可能性もあります。そのような社員は中長期で活躍することは難しい可能性もあるため、一定のドライな判断も必要です。