2.業務費用
(1)業務費用推移

業務収入の増加と同様、右肩上がりとなっており、2020年度は1,000億円を超えています。なお業務収入に占める割合は、2017年度のみ95%ですが、それ以外は98~99%程度の水準で推移しています。
続いて業務費用の7割を占める人件費を見てみます。
(2) 人件費推移

2016~2017年度にかけて5億円減少していますが、これは退職給付費用が22億円減少したことによるものであり、報酬給与は6億円増加しています。2017年度以降は増加傾向にあり、基本的には右肩上がりと言えます。
人件費の増加理由を紐解くため、人員数と1人当たりの単価に分けてみてみます。
(3) 人員数推移

2016及び2017年度の「業務及び財産状況説明書」には監査補助職員、その他の事務職員の人員数が記載されておらず、法人全体の人員数推移は不明です。ここでは公認会計士等に限定し、人員数を見ていきます。
上記グラフから分かる通り、公認会計士等の数に大きな変動は見られず、ここ5年間は4400人前後で推移しています。
なおグラフにはありませんが、監査補助職員等の数は増加しています(2018年6月末1710人→2020年6月末1850人)。
(4) 1人当たり報酬給与・賞与推移

上記を見ると2016~2019年にかけて12百万円強で推移していたものの、2020年には14百万円弱にアップしています。ただし比較的単価が安いと想定される監査補助職員等の人員数推移を加味すると、増加幅は少し抑えられそうです。
以上から、人件費増加の要因として、1人当たり報酬給与・賞与の増加に加えて、監査補助職員等の人数増加の影響が考えられます。
なおトーマツ同様、業務委託費(あずさはその他の業務費用に分類)が増加傾向にあり(2016年度51億円→2020年度73億円)、この辺りで業務量の増加に対応しているのかもしれません。
(5) その他
項目別の業務費用推移を見てみます。

2016年度と2020年度を比較すると、上述の人件費の他、施設関連費用+17億円、情報システム関連及び通信費+21億円、その他業務費用+29億円と、全体的に増加傾向にあります。施設関連費用については事務所移転等に伴う増加、また情報システム関連及び通信費については監査のDXやAI対応等に伴う増加と推測されます。
その他業務費用について内訳を見ると、業務委託費が+22億円、グローバル加盟料が+8億円の増加となっています。後者については提携先KPMGのネットワークに対する加盟料が増加傾向にあるようです。

業務費用についてまとめると、7割を占める人件費については、監査補助者等の増加に加えて1人当たりの単価もアップさせていることでコスト増。また人件費には含まれていない業務委託費や、固定費的に発生すると想定される施設関連費用、情報システム関連及び通信費、グローバル加盟料も増加傾向にあります。後述の通り、業務収入増加の一方で営業利益率がアップしていない原因はコスト増と言えそうです。



