3.営業外収益費用、特別損益
営業外収益費用、特別損益についてまとめておきます。

(1) 貸倒引当金繰入額/戻入益
2016年度に貸倒引当金繰入額6億円を営業外費用に計上し、2018年度には16億円を戻し入れています。2018年度の附属明細書では「貸倒引当金の当期減少額・その他の欄の金額は、一般債権の貸倒実績率による洗替額及び個別債権の回収可能性の見直しによる戻入額等である。」と戻入の理由が記載されています。
戻入を計上している2018年度の営業利益は5億円に留まっています。仮にこの戻入16億円がなかったとすると、経常利益・税引前利益は6億円程度に留まり、法人税等を加味すると最終赤字となっていた可能性があります。
(2) 事務所移転関連損失
2017年度の決算で事務所移転関連損失として7億円を特別損失に計上しています。損益計算書注記を見ると解約違約金4.6億円、事務所移転損失引当金繰入2.8億円となっています。
ここ5年間において、特別損益項目は事務所移転関連損失のみであり、トーマツの特別損益項目と比べると非経常的な取引は少ないようです。一方で営業外収益・費用については「その他」の金額が大半を占めており、こちらの詳細な内容は不明です。
4.利益
(1) 営業利益、営業利益率推移

営業利益を見てみると、2017年度に大きく伸びたものの、2018年度は逆に大きく減少、その後は増加傾向にあります。
2017年度は業務収入の増加の他、前述の退職給付費用22億円減少の影響が大きいと考えられます。
大幅な減益となった2018年度は、新規監査契約受注の停止による業務収入の伸び悩みに加え、人件費+34億円(うち報酬給与+6億円、賞与関連+13億円、退職給付費用+8億円 等)、施設関連費用+14億円、情報システム関連及び通信費+9億円、グローバル加盟料+6億円等、様々なコストアップ要因がありました。
2019年度以降は受注再開による増収効果が各種コストアップを上回り、増益傾向にあると想定されます。
なお営業利益率は、2017年度こそ5%と高いものの、それ以外は2%前後で推移しています。
(2) 当期純利益、当期純利益率推移

当期純利益についても2017年度が飛びぬけており、事務所移転関連損失7億円の影響は感じられません。一方、翌2018年度については、前述したように貸倒引当金の戻入16億円等により、なんとか黒字を確保しているように見えます。2019年度以降は、営業利益の推移と同様、安定しているようです。
当期純利益率については、こちらも2017年度(6%)を除き、1%程度となっています。利益率を見ると低いように感じられますが、極端な黒字や赤字転落をうまく避けていると言えるかもしれません。



