3.請求人の主張

消費税法第9条の2第4項は「特定期間」[2]について定義をしているが、同項が指している「前3項」は課税期間の基準期間における課税売上高が1千万円以下である場合の規定であり、基準期間がない請求人においては、そもそも「特定期間」はないと解される。

そして、その事業年度の基準期間がない場合には、消費税法第12条の2《新設法人の納税義務の免除の特例》第1項の適用がなければ、同法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項本文が適用されるところ、請求人の本件課税期間に係る事業年度開始の日における資本金の額は1千万円未満であるから、同法第12条の2第1項の適用はなく、同法第9条第1項本文が適用される。


[2] その事業年度の前事業年度(7月等の短期事業年度を除く)がある法人の場合は、その前事業年度開始の日以後6月の期間をいい、前事業年度が短期事業年度である法人は、その事業年度の前々事業年度(一定のものを除く)開始の日以後6月の期間(前々事業年度が6月以下の場合は、その前々事業年度開始の日からその終了の日まで)をいう(消法9の2④)。

4.審判所の判断

(1)法令解釈

消費税法は、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1千万円以下である者については、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除する旨の規定(同法第9条第1項本文《小規模事業者に係る納税義務の免除》)をおいている。しかし、この事業者免税点制度は、小規模零細事業者の事務負担への配慮、多数の納税者に対する税務執行への配慮等から定められたものであるから、同項ただし書は、別段の定めがある場合には、同項本文の規定の適用がないことを明らかにし、これを受けて、同法第12条の2第1項は、その事業年度の基準期間がない法人のうち、当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1千万円以上である法人について、当該事業年度における課税資産の譲渡等につき、同法第9条第1項本文の規定を適用しないこととしている。

また、消費税法第12条の2第1項は、その事業年度の基準期間がない法人のうち一定の法人について、同法第9条第1項本文の規定を適用しないこととなる課税期間を規定しているところ、同法第12条の2第1項の括弧書において、同条の適用がある法人の課税期間から同法第9条の2第1項の規定により納税義務が免除されないこととなる課税期間が除かれていることからすると、同法第12条の2第1項は、同法第9条の2第1項の適用対象にその事業年度の基準期間がない法人が含まれていることを前提に規定されており、同法第9条の2第1項の適用対象に、その事業年度の基準期間がない法人が含まれることは明らかである。

(2)検討

上記(1)のとおり、消費税法第9条の2第1項に規定する「法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1千万円以下である場合」には、当然にその事業年度の基準期間がない場合が含まれ、同条の規定は、その事業年度の基準期間がない場合であっても適用されるところ、請求人の本件課税期間の特定期間に該当する本件期間における課税売上高及び本件給与等支払額は、いずれも1千万円を超えていることから、同条第1項及び第3項の規定により、請求人の本件課税期間における課税資産の譲渡等については、同法第9条第1項本文の規定は適用されず、請求人の消費税の納税義務は免除されない。

(3)請求人の主張の排斥

上記(1)のとおり、消費税法第9条の2第1項は、その事業年度の基準期間がない場合であっても適用されるのであり、また、同項の規定が適用される場合には、同法第12条の2第1項の規定の適用はないことから、同項の要件に該当するか否かにかかわらず、消費税の納税義務は免除されない。