相続税調査は申告から1年後にやってくる
準確定申告が終わっても、相続はそれで終わりではない。場合によっては税務調査になることもあるのだ。相続税の申告事案のうち、税務調査の実地調査が行われる割合は約2割。つまり、単純計算で5人に1人の割合で税務調査が入ることになる。
実地調査があると、8割以上の割合で申告漏れ等の非違が指摘され、非違があったもののうち、重加算税が賦課される確率は約1割超になる。
その相続税調査だが、申告から1年後に行われることが多い。
それでは、相続税の調査ポイントだが、現職時代は相続税調査を専門にやってきた国税OB税理士に話を聞くと、「名義預金、名義株」をあげる。名義預金とは、子どもや孫の名前で銀行口座を設け、そこに被相続人のお金の一部を預金しておくこと。名義株も同様に、子どもや孫の名前を使い株式を購入し、お金を払うのは被相続人というケースだ。
それでは、他人名義の財産を被相続人に帰属する財産とどのように判断するのか。相続税などの国税は、一般的に実質の所有者や所得者に課税する実質課税主義を取っている。名義は誰であろうと、実質、被相続人に帰属する財産なら、相続財産として相続税の課税対象となるのだ。
名義預金や名義株など他人名義の財産の帰属の判断ポイントについて、複数の資産税部門(相続税調査部門)だった国税OB税理士に話をきくと、
- ①誰がその財産を管理・運用・支配しているか
- ②利息や配当金などの法定果実を誰が受け取っているのか
- ③その財産の設定・取得の原資は誰が負担しているか
で判断すると言う。
もう少し具体的に言えば、
(Ⅰ)預金通帳、証書、届出印鑑、キャッシュカード等を誰が所持しているのか、通帳や印鑑を被相続人が保管しているときは預金口座に入金していたのは被相続人ではないか疑問を持たれる。
(Ⅱ)その保管場所が、被相続人の自宅の金庫、被相続人の主宰法人の金庫、被相続人名義の貸金庫等であれば、被相続人の財産ではないか疑われる。
(Ⅲ)預金通帳等の所持や保管の状況は相続開始時点ではどうだったのか、調査日現在はどうなのか
(Ⅳ)預金や株式の取引の指示は誰が行っていたのか
(Ⅴ)預金等の設定の原資、株式等の購入原資は誰が負担していたのか
(Ⅵ)設定や購入の原資が被相続人の資金の場合は贈与が行われているか否か、贈与税の申告や納税を行っているか等が財産の帰属の判断のポイント。
となる。
名義預金、名義株は誰が管理・支配していたかがカギ
相続税の税務調査では、被相続人の預金口座から高額な出金がある場合、必ずその使途を確認する。とくに、死亡の日前後の預金の引き出しは必ず確認する。
調査担当者は、必要に応じて銀行等の反面調査も実施して、預金や株式取引口座の開設申込書、払い出し請求書等の筆跡の確認、銀行や証券会社当の取引担当者の聞き取り調査を行う。これらの要素を総合的に分析し、財産が誰に帰属するのか判断する。
前出の国税OB税理士によれば、「預金等が名義人に帰属する財産と判断するには、名義人がその預金等を管理・支配し、自由に使えて処分できる状況にあることが必要」と指摘する。財産の帰属の判断は、個々の事情により違ってくるが、相続人本人も知らない被相続人名でない「預金口座」「株式」が分かったら、「名後預金」「名義株」と判断される可能性が高いことは肝に銘じておきたい。
バナーをクリックすると㈱レックスアドバイザーズ(KaikeiZine運営会社)のサイトに飛びます
最新記事はKaikeiZine公式SNSで随時お知らせします。
◆KaikeiZineメルマガのご購読(無料)はこちらから!
おすすめ記事やセミナー情報などお届けします




