●合意消滅で対価を払ったら「譲渡所得」が発生

みなし贈与として扱われるのは「無償で意図して消滅させた場合」の話です。配偶者居住権は譲渡禁止財産ではありますが、消滅させざるを得ないときもあります。このとき、対価を払うこともあるでしょう。対価が支払われると、譲渡所得として扱われます。

この譲渡所得、次の2つの点で問題となります。

1.配偶者居住権の譲渡は累進課税の対象

配偶者居住権は土地と建物そのものではないので、総合課税の対象となります。つまり、他の所得と合算した金額が高ければ高いほど、高い税率が適用されます。土地や建物のように、分離課税で完結するのとは違うので注意しなくてはなりません。

2.所得税・住民税を払うのは配偶者

譲渡所得が発生するのは配偶者です。すなわち、所得税・住民税を負担するのは住んでいる配偶者となります。たいていのケースだと、配偶者は高齢で年金暮らしです。中には会社経営や不動産投資で資金が潤沢にある人もいるかもしれませんが、大半は細々と暮らしています。こういった高齢の配偶者に多額の納税ができるかどうかが問題となります。

この他、親族間の低額譲渡だと別途、所有権者に贈与税がかかるという問題が生じます。「時価よりも安く買える」ということは、その分得しているため、贈与とみなされるのです。

【参考】「配偶者居住権に関する譲渡所得に係る取得費の金額の計算明細書」等の記載例について(国税庁)

●ベストな消滅時期がわからない

「設定期間を満了」「配偶者が死亡」であれば、課税されることなく自宅全体の所有権を持ち主は持てるようになります。つまり配偶者居住権が消滅するまで待てれば、二次相続での節税が叶うわけです。ただし、この消滅時期が適切かどうかは誰にもわかりません。

「10年経ったら老人ホームに入居するから」といって期間を定めて設定したのに、いざ10年経ってみたら「老人ホームが満室で入居できなかった」「配偶者の気が変わった」となるかもしれません。逆に、配偶者が高齢であることを考慮して終身で設定してみたら、予想以上に長生きした上、認知症を発症してしまい、介護費用捻出のために家を売りたいのに売れなくなってしまった…ということになることもあるでしょう。

将来は誰にも分かりません。そのため「設定した期間に問題なし」とは言い切れないのです。

●「最善の節税策」とは限らない

「二次相続での相続税を軽減できる」___これが配偶者居住権の税務上の強みですが、最善の節税策とは限りません。

一次相続では配偶者が自宅を相続して配偶者の税額軽減を使い、二次相続では長男が自宅を相続して小規模宅地等の特例を使えば、もっと相続税を抑えられることもあります。「被相続人と同居」あるいは「別居だけど持ち家がない」といった条件をクリアできるなら、配偶者居住権を設定しない方がよいかもしれません。

この他、「配偶者が若いがゆえに、住む権利の評価額が高くなった」「小規模宅地等の特例を使いきれない」などで「使わない方が節税になった」といったこともあります。