配偶者居住権には短期と長期の2種類があります。このうち、相続税の対象となるのは長期配偶者居住権(以下、「配偶者居住権」)です。この配偶者居住権は「節税策になる」と言われています。なぜでしょうか。今回は2回に分けて、そのしくみを解説します。

■確認しよう!配偶者居住権3つの特徴

最初に、配偶者居住権の特徴を確認しましょう。

●1.配偶者居住権は「無償だけど強力な利用権」

配偶者居住権の目的は「家の持ち主の死亡後における配偶者の生活保障」です。「所有権を相続すると、預貯金をもらえない」「子が家を相続したら、追い出されるかもしれない」など、被相続人亡き後の生活に悩む配偶者を保護すべく、明文化されました。

ポイントは「無償で住んでいても追い出されない」点です。無償で財産を借りて使用する契約を「使用貸借」といいますが、ここでの借主の権利は非常に弱いのです。貸主が「今すぐ出て行け!」と言ったら、借主は出ていかざるを得ません。本来、借主の権利を強力に守るなら、借家権や借地権のように、相応の賃料を貸主に払わなくてはならないのです。

「無償で住み続けられる」配偶者居住権も、使用貸借の一つです。しかし、こちらは簡単に追い出せません。使用貸借でありながらも強力な利用権なのです。

●2.「長く安心して住める強力な権利」=財産としての価値あり

配偶者居住権を設定すると、配偶者は長い間、自宅に住めます。「10年」「20年」などと期間を区切ることもできますが、死ぬまで住むことも可能です。そしてその間、持ち主は配偶者を追い出せません。このため、家を売りたくても売れないのです。

自由にできない分、持ち主の所有権は制限されます。それだけの価値が、配偶者居住権にはあるわけです。そして、設定のきっかけは自宅の持ち主であった被相続人の死亡です。結果、一つの価値ある相続財産として評価され、相続税の課税対象となります。

●3.「期間満了」「配偶者の死亡」で消滅する

配偶者居住権は財産の一つである一方、「被相続人の配偶者にしか認められない権利」という側面があります。配偶者居住権を貸したりあげたり売ったりすることはできません。あくまで「配偶者の住む権利を守るためのもの」だからです。

そして、設定期間の経過や配偶者の死亡と同時に消滅します。この他、所有権者との合意で消滅させることも可能です。