ビジネスは誰にどのような「価値」を提供するのか、がすべてです。そこには絶対に欠かせない3つのポイントがあります。第38回【儲けのしくみ】ビジネスモデル構築の極意は、「3つの価値」です。

3つの価値

どのような商品やサービスであれ、市場で受け入れられ、売れ続けているものには必ずこれらの価値を携えています。

  1. 機能的価値
  2. 情緒的価値
  3. 社会的価値

 

以前は機能と情緒の2つでした。

世界がグローバルにつながり、地球環境などが問われる現在、3つめの社会的価値が含まれるようになりました。

この3つは、哲学者のアリストテレスが「弁論術」で記し、今日まで語り継がれてきた人を説得するための3つの原則にそのまま当てはまります。

いわゆる、「ロゴス(論理)」「パトス(情熱)」「エトス(信頼)」です。

機能的価値

基本的価値とも呼ばれます。
その商品やサービスが提供する基本的な価値のことを指しています。

例えば、東京都内を縦横無尽に走っている都バス。
路線バスの機能的な価値は、

① 運転しなくても予め決められた近くの場所へ移動できること
② 特定の場所で待っていれば決められた時間にやってくること
③ 低価格で利用できること(都バスの場合210円)

の3つです。
同じ移動できる乗り物であるタクシーの場合、

・バスのように途中止まらず、目的地に直接向かう

という異なる価値を持っています。
さらに、鉄道、例えばJRになれば、バスが持つ3つの価値のうち①が、

・長い距離

に置き換わります。
いずれにせよ、バス、タクシー、鉄道といった乗り物の場合、

「自分は何もしなくても違う場所に移動できる」

という機能的価値を持っています。

ホテルなら、泊まれること」
スピーカーなら、「音が聞こえること」
キーボードなら、「文字が打てること」

機能的価値とは利用者が予め持っているイメージとズレがない価値とも言えます。
(この機能が満たされていないと誰も手に取ることはありません)

情緒的価値

感情的価値ともいわれる価値です。

機能的に満たされるだけで満足しないのが人間です。
その商品やサービスを使うと、うれしい、楽しい、ワクワクするといった感情を引き出す価値が欠かせません。

さきほどのバスのケースであれば、「観光バス」があてはまります。
観光バスは、路線バスが持っている基本的価値、

① 運転しなくても予め決められた近くの場所へ移動できること
② 特定の場所で待っていれば決められた時間にやってくること

の2つを踏襲しながら、

③ 観光したい場所に「快適に」移動することができる

という価値を持っています。
これは、本コラムの第6回でご紹介した「価値観」のうち、「自然志向」「利便性」「リラックス・癒し」という価値を満たしています。

同様に、ホテルでも単に泊まるだけではなく、

  • ・ぐっすり眠ることができる
  • ・大浴場があって疲れを取ることができる
  • ・健康的な朝食が揃っている

といった感情に直結する価値を提供しているケースがあります。

機能的価値をベースにして、さらにそれを利用したり購入したりすることで感情が動きだす要素、それが感情的価値です。