内部統制監査と財務諸表監査の関係
内部統制監査は、原則として、同一の監査人により、財務諸表監査と一体となって行われます。内部統制監査の過程で得られた監査証拠は、財務諸表監査の内部統制の評価における監査証拠として利用され、また、財務諸表監査の過程で得られた監査証拠も内部統制監査の証拠として利用されることがあります。つまり内部統制監査と財務諸表監査は独立の関係になく、相互に関連した性質を持っています。
上述の関係から、JSOX担当者自身も内部統制だけでなく財務諸表監査において提出する資料等にも十分に把握、留意して作業を進める必要があります。
内部統制監査の実施手順
(1) 監査計画の策定
監査人は内部統制監査の実施に際して監査計画を策定します。計画の策定に際し、監査人は、企業の置かれた環境や事業の特性等を踏まえて、経営者による内部統制の整備及び運用状況並びに評価の状況を十分に理解し、監査上の重要性を勘案しなければならないとされています。監査人が策定する監査計画は、一律的な取り扱いでなく、「企業の置かれた環境」や「事業の特性」等、個別の事情を踏まえることが求められていることが分かります。
つまり、JSOX担当者は、監査人に自社の経営環境、状況等について積極的に情報提供を行い、監査人に自社を「詳しく知ってもらう」ことが必要となります。「監査人は把握しているであろう」という前提を置かず、積極的に「自社を知ってもらう」というスタンスを継続することで、監査人とのコミュニケーションの円滑化、中長期視点で説明に要する工数の削減等が期待できます。
(2) 評価範囲の妥当性の検討
監査人は、経営者により決定された内部統制の評価の範囲の妥当性を判断するために、経営者が評価範囲を決定した方法やその根拠の合理性を検討します。
JSOXの評価対象を決める作業となりますので、後工程の早期着手を目指すためには、評価範囲については早い段階で監査法人と合意することが大切です。
また、監査人は、経営者がやむを得ない事情により、内部統制の一部について十分な評価手続を実施できず、評価手続を実施できなかった範囲を除外した内部統制報告書を作成している場合には、経営者が当該範囲を除外した事情が合理的であるかどうか、当該範囲を除外することが財務諸表監査に及ぼす影響について、十分に検討しなければならないとされています。
経営者が十分な評価手続を実施できなかった内部統制の範囲については、内部統制の有効性が把握できていない状態となることから、監査人は当該範囲が財務報告に与える影響を慎重に検討しなければなりません。監査人が慎重な検討を行うということは、監査人からの追加質問、追加資料要求にJSOX担当者は対応が必要となることを意味します。JSOX監査をスムーズに進めるためには極力内部統制の一部について十分な評価手続を実施できない範囲が生じないように、計画的に作業を進め、可能な限り論点の解消を行うことが重要となります。
(3) 全社的な内部統制の評価の検討
監査人は、経営者による全社的な内部統制の評価の妥当性について検討を行います。監査人は、この検討に当たって、取締役会、監査役等、内部監査等、経営レベルにおける内部統制の整備及び運用状況について十分に考慮することが求められています。
全社統制は財務報告に係る内部統制の有効性の評価のフレームワークのようなものです。全社統制が十分な水準で整備、運用されていない場合、会社のフレームワークが脆弱であることと同義となります。後工程の監査人が実施する手続きにも広範な影響があるため、全社統制の整備、運用状況には十分な注意が必要です。
(4) 業務プロセスに係る内部統制の評価の検討
監査人は、経営者による業務プロセスに係る内部統制の評価の妥当性について検討を行います。監査人は、この検討に当たって、経営者による全社的な内部統制の評価の状況を勘案し、業務プロセスを十分に理解した上で、経営者が統制上の要点を適切に選定しているかを評価しなければならないとされています。
監査人の業務プロセスに係る内部統制の評価は、全社的な内部統制の評価を基礎として実施されることから、JSOX担当者は監査人とのコミュニケーションを通じて、全社統制に問題がないか、早い段階で監査人と十分に協議、確認を行うことが重要となります。



