日本・シンガポール租税条約の検討
国内法で事業譲渡類似株式に該当するとしても、租税条約で課税を認めていない場合があるので、必ず租税条約の確認が必要となります。
日本・シンガポール租税条約第13条(譲渡所得)では、法人の株式の譲渡について以下のように規定されており、いわゆる「事業譲渡類似株式」について日本で課税できることとされています。
第13条第1項(b)
一方の締約国【シンガポール】の居住者が他方の締約国【日本】の居住者である法人の株式の譲渡によって取得する収益に対しては、次のことを条件として、当該他方の締約国【日本】において租税を課することができる。
- 当該譲渡者が保有し又は所有する株式(当該譲渡者の特殊関係者が保有し又は所有する株式で当該譲渡者が保有し又は所有するものと合算されるものを含む。)の数が、当該課税年度中又は当該賦課年度に関わる基準期間中のいかなる時点においても当該法人の株式の総数の少なくとも25パーセントであること。
- 当該譲渡者及びその特殊関係者が当該課税年度中又は当該賦課年度に係る基準期間中に譲渡した株式の総数が、当該法人の株式の総数の少なくとも5パーセントであること。
※【 】は筆者が追加
すなわち日本・シンガポール租税条約によると、シンガポール居住者であるオーナーが、日本法人の株式を年間通じて25パーセント以上保有しており、その株式を発行総数の5パーセント以上譲渡した場合、譲渡益は日本で課税されることになります。
本ケースの場合
このケースにおいて、Bが保有する株式が「事業譲渡類似株式」に該当するか検討します。
株式の保有と譲渡の状況は以下の通りとなっています。
- ・Bの親族等で100%の株式を保有している →「25%以上を保有」の要件を満たす
- ・Bは20%の株式を譲渡している →「5%以上を譲渡」の要件を満たす
よって、このケースの場合、事業譲渡類似株式の譲渡に該当することとなるため、譲渡所得は日本で課税されます。
租税条約の確認が必須!
事業譲渡類似株式の譲渡については、租税条約で何も規定が置かれていないものもあり、その場合には、事業譲渡類似株式の譲渡益は日本で課税されないこととなります。
このように、国内法の規定と異なる結果になるケースもあることから、租税条約の規定の規定振りには十分に注意する必要があります。
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