令和3年11月1日より、新500円玉の発行が開始されており、だんだんと市中に出回ってきたように見受けられます。ピカピカの新500円玉をお釣りでもらい、少し嬉しい気持ちになった読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?今回は、日本の貨幣発祥の地、埼玉県の秩父にスポットを当ててみましょう。

偽造防止のバイカラー・クラッド技術

貨幣や紙幣は、偽造防止のため度々リニューアルされています。渋沢栄一が描かれる新1万円札ではホログラム加工がなされるなど、最新技術が注目されています(本コラム「納税のための貨幣〔後編〕:偽札と渋沢栄一」も参照)。

新500円玉にも多くの偽造防止加工が取り入れられており、その1つに「バイカラー・クラッド」という技術があります。バイカラー・クラッド技術とは、2種類の金属板をサンドイッチ状に挟み込んでできた円板を(クラッド技術)、別の種類の金属でできたリングの中にはめ合わせる技術(バイカラー技術)です(財務省HP「解説!新しい500円貨」参照)。

旧500円玉はニッケル黄銅のみで作られていましたが、新500円玉はニッケル黄銅、白銅、銅の3つの素材を、バイカラー・クラッド技術により組み合わせることで、偽造を防いでいるということですね。

「和銅」という年号

ところで、日本の貨幣発祥の地が埼玉県の秩父であることをご存知でしょうか?

今から遡ること1314年前、慶雲5年(708年)に武蔵国秩父郡(現在の埼玉県秩父市)から和銅という自然銅が発見され、都へ献上されました。時は都城・平城京の完成を目前に控えた頃、『続日本紀』によれば、元明天皇はこれを大いに喜んだそうです。なんと、元明天皇は年号を「和銅」に改めたというのですから、銅の発見がどれほどの大発見だったかを窺い知ることができるでしょう。改元に当たっては、恩赦のほか、高齢者や善行者の表彰、困窮者の救済、官位の昇進などもなされたと伝えられています(秩父市・秩父市和銅保存会掲示も参照)。

その後、銭貨鋳造を司る「催鋳銭司(さいじゅぜんし)」長官に多治比真人三宅麻呂(たじひまひとみやけまろ)が任命され、日本最初の通貨とされる「和同開珎」が発行されました(この「和同開珎」は「わどうかいちん」とも「わどうかいほう」とも呼ばれるようですが、最近の多くの教科書では「わどうかいちん」と記載されているようです。)。